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2022年08月05日

植物との共生微生物について考える

植物との共生微生物について考える


 腸内細菌などの消化器官に常在する共生微生物の存在は、ヒトのみならず様々な生き物にとって、なくてはならない存在であることは、近年、多くの人に知られるようになってきました。
また、消化器官だけでなく、身体全体を覆っている皮膚をはじめ、身体の至るところに共生微生物が存在し、生命維持のために共存共栄の関係を続けていることは、健康の維持増進だけでなく、生態系の持続可能性についても重要な役割をはたしていることについて注目を集めています。

 植物と微生物との共生関係として、もっとも有名なのが、シアノバクテリアと共生することによって光合成という能力を獲得したことです。

 この光合成は、地球上の多くの食物連鎖の土台を担っているのと同時に、現在の大気における酸素濃度を保ったり、さらにはオゾンの生成に繋がることで、有害な紫外線を吸収するためのオゾン層が成層圏に出来たことによって生物が陸上で生活できるようになったとされています。

 この、シアノバクテリアの誕生が27億年前、・・・植物との安定した共生関係が出来上がり、生態系の仕組みの中で光合成が大きな役割を担い始めてから15億年になると言われています。

 名古屋大学大学院生命農学研究科の竹本大吾准教授によりますと、植物は、エンドファイトと呼ばれる共存に有利な共生微生物と様々な共生関係を持つことで、植物自身の生態系内での持続可能性を保っているとしています。

 そもそもエンドファイトとは、植物に内在する微生物の総称で、細菌の仲間やカビの仲間もこれに該当すると定義づけされています。

 語源としては、ギリシア語で内側を意味する「エンド」と、植物を意味する「ファイト」からつくられたとされており、植物に明らかに害を与える微生物に関しては、病原菌とされエンドファイトには含まれないという事になっています。

 このエンドファイトと言われる微生物が、具体的にどのような働きをしているかを紹介していきます。

 まずは、現在の植物の8割以上が感染していると言われている菌根菌です。植物に、この菌が感染し、植物の根の先に菌の根が伸びることで土中の養分をより多く吸収できるというのです。

 この菌根菌との関係は、植物が進化の過程で地上に進出する際に、陸上で根を張って栄養を吸収するには根が弱かったため、その不足分を補うために菌のチカラを借りていたと考えられています。

 また、外敵に対する防御の仕組もエンドファイトによるものが多いとも言われています。

例えば、ホソムギと呼ばれるイネ科の植物では、エピクロエ属の微生物の影響によって、エルゴバリンやロリトレムBという毒性物質を産生することで、動物の捕食から身を守っているといわれています。

 実際に、ニュージーランドで、ホソムギを食べた羊に脚を引きずるような症状が出たり、アメリカでは牛の血流が悪くなり末端が壊死するなどの報告もあるそうです。

 また、同じようにエピクロエ属の微生物が、昆虫が嫌がるペラミンという物質を産生することで、昆虫からも身を守っているというような事もありますので、エピクロエ属のエンドファイトは、ホソムギにとって動物や昆虫の捕食から身を守るための大切なパートナーだともいえると思います。

 他にも、エンドファイトには乾燥や、耐塩性の向上、浸透圧ストレスへの耐性、重金属への耐性など様々な関係性があることが解ってきています。

 このように、植物や動物を含めたあらゆる生物と、微生物との共生関係は切っても切れない関係になっていることが解ります。とはいえ、「必ずしも、始めからそのような関係であったわけでもない・・・」とも考えられています。

生物と微生物との共生関係は、闘いを続けるのではなく、「両者の利害が一致する落としどころ・・・」みたいな関係に落ち着くのが、進化の常であり、自然の摂理でもあるようですので、どのような関係性も、長いタイムスケールで考えていく必要がありますね。






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Posted by toyohiko at 15:05│Comments(0)地球を考える
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