2023年03月10日
夜更かし」について考える

「夜更かし」というのは、誰もが「ついついしてしまう・・・」生活リズムのパターンのひとつかと思います。また、そのイメージとしてもあまり、ポジティブなイメージではなく「良くないもの・・・」という認識を多くの方が持っているのではないでしょうか。
その認識になる考え方の中心には、「人間には夜行性という習性はなく、日中活動する身体の仕組みになっている」ことを理解していることとも繋がっていると思います。
実際に、日中の長い昼寝や、不定期な就寝時刻などの習慣がある人が、夕方の仮眠につながるケースも少なくなく、不安や抑うつのレベルが高い傾向があることもわかっています。
また、週末に遅くまで寝ている・・・という、いわゆる「寝だめ」をしている人もいるかもしれませんが、そもそも「寝だめ」は出来ないというのが睡眠に関する多くの研究者の共通した見解です。
そのような状態で、むりやり「寝だめ」をするかのような生活の習慣は、自らの意思で日々の生活のリズムを乱し、「時差ぼけ」状態をつくり出しているともいえます。
一般的に言われてるのは、「寝だめ」のような、日によって異なる生活パターンが出来てしまう状態は、そもそも通常時の睡眠が足りていない状態であることを理解し、日常の睡眠時間の確保のための工夫をすることが大切であるとも言われています。
江戸川大学人間心理学科及び睡眠研究所長の福田一彦教授によれば、多くの人が「夜更かし」をしてしまうには、「体内時計が関係している」と述べています。
体内時計が24時間以上の時間を刻んでいるという事は、様々な研究で明らかになってきています。そして、その体内時計のリセットボタンを起床時の太陽光などの光によってリセットすることで、身体のリズムを保っています。
つまり、体内時計は、終了時間が曖昧で・・・、スタートボタンは自身の行動によって行われるという事になるために、「夜更かしは得意なのですが、早寝はあまり得意ではない・・・」のです。
言い換えれば、「普段寝る時間より長く起きている事よりも、早く寝る方が苦手・・・」であるという事です。「明日早いから・・・」といって、いつもより早い時間に床についてもなかなか寝付けない事の方が多いという事です。
だから、どうしても「夜更かし」をして、仕事や勉強をしてしまう人が多いのです。
「夜更かし」が、体調などに何の問題もないのであれば良いのですが、睡眠不足同様に、睡眠と覚醒のリズムが乱れてしまうことについては見過ごしてはいけない問題も多いと言われています。
日本の中学生約5,000名を対象に、調査をした結果では、「夜更かしであればあるほど、抑うつレベルは高くなり、同じ時刻に眠っていても、夕方に仮眠をとっている人ほど、抑うつレベルが高い」というような報告もあります。
また、米国の中高校生(13~19歳)を対象とした調査でも、就寝時間と学業の成績とは密接に関係しており、「成績が悪くなるほど就寝時刻は後退し、睡眠時間が短くなっている」という報告とともに、成績だけではなく精神状態にも悪影響を与えているという結果が出ている事例もあるようです。
先ほども言いましたように、「夜更かし」や夜ではない時刻に眠ることは、私たちの身体のリズムを乱す行為です。
わかりやすく言い換えれば、「時差ボケ」のような状態です。このような状態では、認知能力は低下し、メンタルヘルスも悪化してネガティブな思考となり、良いことは一つもないという認識を改めて持つ必要があるのではないでしょうか。
米国の国立睡眠財団が推奨する年齢ごとの睡眠時間は、6〜13歳で9~11時間、14〜17歳で8~9時間、18〜25歳では7〜9時間とされています。
これに対して、6時間台の睡眠が平均値である日本と比べてみると大きな差があるのが現状です。
「夜更かし」の習慣を早起きの習慣に直す、つまり早寝早起きの方向に変化させるのは、非常に難しいという事を、体内時計の仕組から考えても紛れもない事実であると考えなければいけません。
「試験や大切な仕事は、夜中に行われることはまずない・・・・」という事を前提に、「夜更かし」習慣に陥らない、「早起きのリズムを崩さない」ことを意識して、いま一度、生活のリズムを見直していく事が大切なのかもしれません。
Posted by toyohiko at 12:59│Comments(0)
│身体のしくみ