2023年03月17日
環境中のプラスチックゴミ問題をあらためて考える

3年にわたる、感性症対策中心のライフスタイルが変化しつつありますが、これまで、ソーシャルディスタンスや不要不急の外出を避ける・・・といった呼びかけのなか、残念ながらまちなかにゴミが散見されることも事実です。
「ゴミは、社会の縮図・・・」という側面もあります。実際に韓国では、北朝鮮からの漂着ゴミのモニタリングをすることで、隣国の生活様式についての調査をしているという研究者もいます。
「ゴミ拾い」という社会貢献活動は数多くありますが、見かけるゴミの多くは、レジ袋であったり、お菓子などのパッケージや、最近とみに多くなった不織布のマスクといったプラスチック製品が多いのが現実です。
これらのゴミは、本来であれば家庭や職場で適切に処理され環境中で見かけるはずのないもの・・・という認識をあらためて持つ必要性も感じます。
プラスチックゴミの象徴ともいえる存在の「レジ袋」ですが、近年の大きなトピックスとして注目されているのが「レジ袋の有料化」です。
この有料化に対しても、ごみを減らしたり、ごみを正しく捨てることがいかに大事なのかを、社会に広く知ってもらうための「意識改革の象徴」であり、海洋中のマイクロプラスチックの削減に直接つながるという事では無いという認識の専門家も多いという事からしても、「技術の問題なのか・・・?」、「社会の規範意識の問題か・・・?」というジレンマは残ったままであるという気がしてなりません。
そのような中、生分解プラスチックに関する技術も着々と進みつつあります。
国内の醸造メーカーのなかには、以前からしょうゆ油を廃棄することなく、既に工業用せっけんや燃料に再利用している会社もあります。
さらに、2020年には、そのしょうゆ油を原料に岩田大学と東京農業大学と共同で、生分解性プラスチックの生合成の研究をはじめ、水素細菌の一種を利用し、PHAと呼ばれる、微生物を利用したバイオプラスチックを合成できるというところまで研究が進んでいるそうです。
日本醤油協会が2007年に発表した「環境自主行動計画についての調査票」によりますと、国内で1年間に廃棄するしょうゆ油の量は約4,600トンにのぼるとされています。
このトピックスだけを、フォーカスしていけば、環境への負荷の軽減に向けた、循環型社会に向けての正常進化・・・と捉えることも出来るのですが、そもそもの「何故、環境中のゴミが減らないのか・・・」の根本解決には至らないという現実も残っています。
以前にも、ご紹介しましたが、現在の生分解プラスチックの技術は万能ではなく、温度や湿度、微生物の分布など、さまざまな条件が揃わなければ、なかなか分解されないなど、一定の条件下において分解されるという性質を持っています。
それゆえに、「生分解プラスチックでできているから、いままでのようにポイ捨てしても良いじゃん・・・」という雰囲気の助長につながるのでは・・・という懸念を示す専門家がいることも事実です。
生分解プラスチックの技術は、確かに技術の進歩を促し、新しい可能性としての価値の創造につながる素晴らしい技術であることは間違いありません。
その一方で、技術開発のコストとして商品の価格に転嫁する必要が出てきますので、「ポイ捨てをし続けることでの影響・・・」は、多くの人が負担することになります。
もちろん、プラスチックが悪いわけでありません。生活に様々な豊かさをもたらしてくれる素晴らしい技術の一つです。
そのような中、環境中のプラスチックゴミ問題と生分解プラスチックとの関係は、「ワガママのコストを善意で支える社会・・・」の持続可能性についてという大きな社会命題を突き付けられているのかもしれません。