2023年05月13日
自己免疫疾患と腸内細菌との関係を考える

自己免疫疾患と腸内環境、特に腸内細菌との関係については、以前から多くの関心を集めていました。その中でも、花粉症をはじめとする様々なアレルギー症状について、免疫システムと大きな関係性を持つことや、腸内細菌叢を構成する腸内細菌と免疫システムとの関わりについて、様々なことが解明されてくるにしたがって、さらなる関心の高まりを寄せています。
また、関節リウマチも炎症性の自己免疫疾患として世界中で何百万人ものひとが苦しんでいる疾病の一つで、そのメカニズムについては未解明なところが多い疾患の一つとも言われています。
そもそも、関節リウマチに関する研究者のあいだで、「腸内細菌が発症に影響を及ぼしているのではないか」というような議論もありましたが、この度、アメリカのコロラド大学、スタンフォード大学、ベナロヤ研究所の共同研究チームによって、関節リウマチの発症を促している可能性のある腸内細菌の特定に成功したという報告が、2022年にScience Translational Medicine誌で発表されたとい言います。
この、研究では関節リウマチ患者と健康な人の便から採取された腸内細菌に関節リウマチに関する抗体を加え、反応を比較するという方法で行われました。
その結果、Subdoligranulum属と言われるグループの中の2つの種類の腸内細菌が、関節リウマチ患者の血液中の免疫細胞であるT細胞をより活性化しているという事が判明したと同時に、さららに、マウスの実験では、この菌株の一つをマウスに投与したところ、関節リウマチの症状が発症したというのです。
しかしながら、今回の研究では対象の菌株が関節リウマチのリスクが高い人と早期の関節リウマチ患者の16.7%でしか見つけられていないという事から、他にも関節リウマチに関与している要因がある可能性は否定できないという事も言われています。
とはいえ、いままでなかなかメカニズムの解明が進んでこなかった、関節リウマチというQOLに大きな影響を与える疾患にたいして、今後の原因究明に対する大きな糸口になったという事についての成果の一つと言えると思います。
自己免疫疾患と呼ばれる多くの症状については、これまで原因がなかなか特定できないなどの理由も含めて、明確な治療法が少なく個別の症状に対しての対処療法という形ですすめられてきたというような実情も少なくないかと思います。
今回のように、腸内細菌と免疫システムとの関係性に関するメカニズムが解明されていくにつれて、自己免疫疾患に関する発症メカニズムに特定の腸内細菌の存在が関わっている可能性が示されたという事は、メカニズムのさらなる解明と、対処療法だけではない、患者のQOL向上に対するアプローチの可能性につながる大きなトピックスとして捉えることも出来るのかもしれません。
Posted by toyohiko at 10:49│Comments(0)
│身体のしくみ