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2023年06月24日

ライフスタイルと睡眠について考える

ライフスタイルと睡眠について考える


 睡眠の大切さについては、多くの方の関心事になりつつあるとともに、スマートウォッチをはじめとする様々なデバイスの発達によって、多くの実態が解りつつあります。

 そのような中、ミシガン大学のチームが、スマートフォンのアプリケーションを利用し、世界各国の6,000人近くの睡眠パターンを調査し、年齢や性別、国の違いが睡眠に及ぼす影響を調査し、以下のような報告をしています。

 まず、一つ目に 女性の睡眠時間の平均は、男性より30分長く、就寝時間は女性の方が早く、起床時間が遅い。

 二つ目は、中年の男性は、ほかの年代・性別に比べて、睡眠の質が悪い傾向が見られた。

 三つめは、若い人の睡眠パターンはさまざまで幅広いが、高齢になるほど個人差は減っている。
 
 四つ目については、睡眠時間が最も短い国はシンガポールと日本で、平均7時間24分になり、睡眠時間が最も長い国はオランダで、8時間12分であった。

 五つ目は、国別の睡眠時間については、起床時間より、就寝時間のほうが影響が大きい。

 六つ目は、就寝時間帯に眠りを促す生物学的な感覚がスマートフォンやタブレットなどの様々なパーソナルメディアデバイスの普及などの社会的な理由によって弱まっていたり、無視されていることがわかった。その結果、就寝時間が後ろにずれ、睡眠時間が削られているとしています。
 このことは睡眠前に「光を発する画面」を見ると、睡眠と関係するメラトニンの分泌量に影響があり、中断を伴う、質の悪い睡眠の原因になり得るという研究結果が2014年にも発表されています。

 最後に、「屋外の光を浴びている」人は、主に屋内で過ごす人と比べて「就寝時間が早く、睡眠時間が長い」ことも報告されています。

 その一方で、今回のミシガン大学の研究以外での報告を見てみますと・・・

 2021年版の経済協力開発機構(OECD)の調査では、33カ国中、日本人の平均睡眠時間は7時間22分と最短であると同時に、男性より女性のほうが13分短く、これは日本を含む6カ国だけの傾向であるとの報告がありました。

 同時期の、2020年のNHK放送文化研究所の「国民生活時間調査」でも同様の傾向が見られます。例えば40代では、平日の睡眠時間は男性が6時間58分、女性が6時間53分。休日はさらに男女差が大きく、男性が8時間23分で、女性が7時間46分というような報告もあり、平日に最も寝ていないのは50代女性で6時間36分。次が60代女性の6時間52分、そして、40代女性の6時間53分という結果になっています。

 これらの結果からしても、各国の平均からすれば女性の方が睡眠時間が長いことに対して、日本では、女性の方が短いというような、国による差があることも事実です。

 2021年に行われた社会生活基本調査で、6歳未満の子どもがいる共働き夫婦の家事関連時間を見ると、妻は6時間33分、夫は1時間55分であったというような調査報告もあり、広島大学生活経営学の平田道憲名誉教授によれば、「外で仕事をする妻も増える一方なのに、日本の夫の家事労働時間は先進諸国と比べてもまだまだびっくりするぐらい短い」というような指摘と共に、家庭依存社会に起因する妻が起床時刻を早くしたり、就寝時刻を遅くしたりして家事時間を捻出している可能性を示唆しています。

 これらの結果を考えると、健康に関する最も重要な要素の一つである睡眠が、社会的な習慣や、ライフスタイルによって大きな影響を受けていることに、あらためて注目することが自身の睡眠の量や質の改善につながるのかもしれません。





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