2023年07月15日
非言語コミュニケーションのチカラをあらためて考える

コミュニケーションの重要さは、いまさら言うまでもありませんが、皆様は、言語情報のやり取り以外による非言語コミュニケーションをどのくらい意識していますでしょうか。
通常の社会生活では、あまり意識したことが無いかもしれませんが、人間社会においての言語によるコミュニケーションの歴史はわずか数万年とも言われています。
言い換えれば、それ以前は、言語を利用しない非言語コミュニケーションによって、社会性を構築したり、様々な、敵か味方かを判断したり、周りが何を考えているかを察する能力を磨いてきたとも言えます。
米国の心理学者であるジョン・フリーマンによれば、人はわずか0.1秒ほどで信頼性や能力、上下関係に至るまで、確認し判断します。もちろん敵か味方か・・・も、です。
そういった意味でも、「顔は、重要な情報源である」ということも言えるのかもしれません。
まだ、未知の部分も多いようですが、このような「顔」を中心とした視覚情報による認識機能は、後天的な認知機能であるにも関わらず、1歳になる前くらいの月齢から持ち得ている能力の一つであり、その判断には、個々の生活環境や固定観念に左右されるステレオタイプ的な要素が介入するというリスクも同時に持ち合わせていると言われています。
そもそも、脳は、そこにあるはずのものを予測することで素早く情報を処理するような仕組になっています。つまり、過去の経験などに基づいて予測するということになりますので、過去の経験に一定のバイアスがかかっているとしたならば、そこには潜在的な偏見のようなものが出来てしまうという可能性があるということになります。
逆に言えば、このような能力を利用することによって、「洗脳」と言われるような偏見に満ちたステレオタイプを作り上げることもできるということにもなりますが、その一方で、顔や表情の信用度は、誰が見ても一致した共通点があることも解っているそうです。
顔の表情を中心とした視覚情報とともに、もう一つの、重要な要素と言われているのが「声」です。
声は、言語ではないか・・・?と思われるかもしれませんが、ここでいう声というのは声の表情ともいえる「声のトーン」についてです。
デンマークの音声学者オリヴァー・ニーブールによれば、声は、信じがたいほど複雑で重奏的なシグナルで、感情をコントロールするよりも声のトーンをコントロールする方が難しいとも言われています。
声は、100以上の要素によってなりたっているとともに、感情からくる筋肉の動きの変化に対しても大きな影響を受け、それにともなう脳の様々な機能や身体の変化が、声に現れることも解っているそうです。
皆さんもお分かりかと思いますが、「聞き手が話し手の意図を理解するのは大変なこと・・・」です。
声のトーンや間などの変化をつけることで、その効果が高まることが解っており、古代ギリシア時代から行われていましたが、現代では失われつつある能力とまでいわれ始めています。
自分の意思を相手に伝えたいときには、「何を言うかではなく、どのように言うか・・・」とまで、言われています。
だからこそ、どのように伝えるかを工夫する必要があり、「速度・音量・間・声の高さの変化」などもその要素のひとつです。
声の表情については、カーナビでの実験事例もあるそうで、カーナビの音声に表現の豊かさを加えた場合に、間違った指示であるのにも関わらず指示に従う傾向があったと言うような結果がでたと言うのです。
つまり、人を惹き付ける声・・・は、信頼を前提とした思考・判断に誘う傾向があるという結果が示されたのです。
この表情や声を上手に操り、様々な人格を創り上げる俳優という職業があるように「表情や声」は、大変重要な情報伝達源になります。
また、人は心理的同期によって、敵・味方の判断も含めて様々な関係性について声をだすタイミングや視線を合わせるタイミングなど、何気ない会話でも非常に複雑な動きにつながる判断を瞬時にしています。そしてその結果を利用し、「自分の思いどおり・・・」を達成しようとする場合もあります。
人間は、他人の気分によって影響を受けやすいようにできています・・・。
非言語コミュニケーションには、「信頼」を構築していくための大切な要素が多く含まれています。もし、知らず知らずのうちに使っているのであれば、あらためて古代ギリシア時代のように意識していく事が必要なのかもしれません。
Posted by toyohiko at 11:52│Comments(0)
│社会を考える