2023年09月01日
加齢と腸内環境との関係をあらためて考える

かつて、成人病と言われていました糖尿病、心筋梗塞、脳卒中などの疾病は、今や生活習慣病と改称されています。その大きな理由は、これらの疾病が加齢によってリスクが高くなると考えられていたのが、加齢の影響のみでなく、日頃の生活習慣による影響が非常に高いことがわかってきたことにより、習慣によっては若年層の方々にも大きなリスクがあるという理由からです。
これと同じような状況が、腸内環境と言われる腸内細菌叢の状態においても明らかになってきました。
2016年から7年間の、腸内細菌DNA検査サービスを行っている民間企業での検査で蓄積された腸内細菌叢データとライフスタイルデータを用いて、年代別の腸の状態を解析したところ、Z世代と呼ばれる20代の年齢層の腸の状態の悪化が顕著であるという報告がなされたというのです。
腸内細菌叢の多様性と食生活から判定する同社独自の「腸年齢判定」によれば、もっとも状態が悪いのが50代であったものの、この50代に類似した状態になっているのが20代だったというのです。
50代の結果については、加齢の影響ということからしても予想通りということになりますが、20代の結果については加齢以外の大きな要因によるものと考えざるを得ないということになります。
この結果について、食生活を中心とした生活リズムに関係してるとされています。
20代については、朝食の欠食率があらゆる年代の中で一番高いことや、実際に、20代の若者の過半数が肉食中心の欧米人に多いバクテロイディス属優勢の構成になっていることからも、コンビニ食など脂肪分が多い食事がメインになっている傾向がうかがえる結果と考えられます。
このバクテロイディス属の腸内細菌は「痩せ菌」として知られている腸内細菌のグループですが、その一方で、バランスが崩れると、うつ病などの精神疾患を含むさまざまな病気にかかりやすくなるとの指摘もあります。
近年の研究では、腸内環境を良好に保つには、腸内細菌の多様性が不可欠という見解が大勢を占め始めています。
その多様性を損なってしまう最も大きな要因として考えられるのが、偏った食事です。「身体を構成するのは、食べ物から・・・」という考え方があります。
近年では、食べ物のみではなく、食べ物を基にしたポストバイオティクスと呼ばれるような、腸内細菌から代謝される様々な人体にとって有益な物質も含めて栄養素として「身体をつくる・・・」という考え方に変化しつつあります。
体力がある若い世代だからこそ、無理ができてしまうし、無理をしてしまいます。
健康というものは、健康な人にとっては「空気のような存在」になっているのだと思います。言い換えると、あって当たり前なので、無くなったら・・・ということは考えないということです。
しかしながら、生活のリズムや食生活の習慣は、たとえ具合が悪くなってからでも、なかなか、治るものではありません。
20代の朝食の欠食率についても、自らの意思をもって朝食を食べないという判断をしているケースは、少数派だと思います。
近年の、体内時計の概念を取り入れた時間栄養学の考え方や、日本人の多くが悩んでると言われている「睡眠」についても、睡眠ホルモンであるメラトニンを十分に確保するには、朝食時にトリプトファンなどの良質なたんぱく質を摂取する妥当性などからしても、朝食のメリットは多いはずです。
とはいえ、実際には勤務やインターネットを使った様々な娯楽を理由に、夕食の時間が遅くなったり、就寝時間が遅くなることで、朝食の時間にお腹が空いていないことや、朝食を用意したり、食べたりする時間がないことが要因となる欠食ということが実情ではないでしょうか・・・
これも、単なる「習慣・・・」といってしまえば、「そうである・・・」、ということなのだと思います。
今回の調査によれば、このような習慣が定着し腸内年齢にも、高齢化が進んでいるという実態があるのだとすれば、若い世代だからこそ食習慣の見直しによる「腸活」が必要なのかもしれません。