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2023年09月29日

脳腸相関をあらためて考える

脳腸相関をあらためて考える

 脳腸相関という言葉が、あちらこちらで聞かれるようになり、いままで脳の領域と考えられてきたメンタルヘルスや認知機能、さらには食の嗜好や感情に至るまで、腸や腸管内での共生微生物である腸内細菌との関わりに対して、急速に関心が高まりつつあります。

 また、生物の進化の過程で一番最初に出来た器官が腸であったり、「脳はバカ、腸はかしこい」というようなタイトルの書籍が出版されたりと、脳と腸といういままで全く別のものとして考えられていた二つの関係が、実は、切っても切れない関係であるということが解ってきています。

 今まで長きにわたり、脳は最高司令官として全身の働きを司る器官と考えられてきました。しかしながら、脳内でのみ起こっていると考えられてきたことが、実は腸との連携があって初めて機能するという事例が沢山あることが解ってきたのです。

 その一つが、幸せホルモンとして知られているセロトニンです。

 セロトニンは、脳内の神経伝達物質で脳の視床下部や大脳基底核・延髄の縫線核などに高濃度に分布しており、他の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンなどの情報をコントロールすることで精神を安定させる働きがあることが知られています。

 その働きゆえに、脳内でつくられるもの・・・という認識の方も多いかと思いますが、最新の研究によれば、脳内でつくられるセロトニンの割合はわずか2%で、8%が血液中、残りの約9割が腸でつくられていることが解ってきました。
 セロトニンをつくるための原料も食事から摂取したトリプトファンというアミノ酸を腸内細菌が代謝した産生物とされています。つまり、腸内細菌抜きには幸せホルモンであるセロトニンをつくる原材料も供給できないということになります。

 さらに、このセロトニンを原料に睡眠ホルモンであるメラトニンを生成していますので、睡眠と腸内環境が密接につながっているメカニズムのひとつとして腸の存在の大きさが伺えます。

 また、近年注目を集めているのが、GLP-1という消化管ホルモンです。このGLP-1は血糖値の抑制や認知機能の改善についての期待が高まっているホルモンになりますが、認知機能という、一見脳機能に関わると思われるようなものなのですが、このホルモンも腸で産生されている物質です。

 さらに、ストレスとの関係についても腸内細菌が関係している可能性が指摘されています。九州大学大学院医学研究院の須藤信行教授らは無菌マウスの通常マウスとの比較実験で、無菌マウスのストレス反応の過敏さなどの結果から、双方のストレスに対する反応の違いについて、「抗ストレスホルモンに関わる、脳のネットワーク強化の過程には、腸内細菌は欠かせない存在である・・・」と述べています。

 多くの人が「抗うことが難しい、生物としての基本的欲求である食欲」も、特に食の嗜好に関わる部分に関しては、腸内細菌が欲するものを知らないうちに選択している可能性について大きな関心が集まっています。

 いずれにしても、何をもって・・・良い腸内環境であるか・・・の正解はなかなか難しいかと思いますが、いままで関係ない・・・と思っていたお腹の中の共生微生物が、「自身の思考や感情にも大きな関わりがある・・・」と思うことで、日常の食事に対する考え方も変化してくるかもしれませんね。






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