身体のチカラ › 身体のしくみ › ショートスリーパーとロングスリーパー

2023年10月19日

ショートスリーパーとロングスリーパー

ショートスリーパーとロングスリーパー


 ショートスリーパーやロングスリーパーという言葉を耳にしたことがある方もいると思いますが、睡眠障害国際分類による睡眠障害の国際的な診断基準では、ショートスリーパー、ロングスリーパーの睡眠時間をそれぞれ6時間未満、10時間以上と定義しているそうです。

 睡眠時間が6時間未満だから、ショートスリーパーということではなく、「睡眠時間が短くても眠気や倦怠感に悩まされることなく健康に過ごすことができる」という前提があり、若くて体力のある時期に睡眠が多少すくなくても大丈夫・・・という状態とは明確に異なっていることが重要とされています。

 ショートスリーパーと自認がある方の中にも、実質的な睡眠不足の状態にあり休日にその分を補っているような、睡眠負債を抱えている状態であったり、不眠症やうつ病、体の病気、治療薬の影響など、さまざまな原因で睡眠時間が短くなっているケースも少なくないからです。

 秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座の三島和夫教授によれば、個人の必要睡眠時間は多因子遺伝的に決定されており、いわば体質のようなものと考えられており、本人の意思で操作するのが難しいと言われています。

 言い換えれば、生活習慣の工夫などで健康的にショートスリーパーやロングスリーパーになることに成功した事例は基本的にないことを理解する必要があります。

 本来、ショートスリーパー、ロングスリーパーと言われる人は、不眠症やうつ病、体の病気、治療薬の影響など、さまざまな原因がなく、体質的に睡眠時間が同年代の平均よりも大きくずれている人を示す言葉として使われています。そのため睡眠障害国際分類でも睡眠障害ではなく、あくまでも正常者の睡眠時間の極端なタイプと位置づけています。

 しかしながら、厚生労働省が実施している平成27年度国民健康栄養調査の結果によれば、一日の平均睡眠時間が睡眠障害国際分類でショートスリーパーと定義されている6時間未満と回答した人は成人の約4割もいるのです。
その一方で、この人々の大部分は不眠や睡眠不足などの睡眠問題を抱えており、実質的なショートスリーパーとは言えない方の割合が非常に多いのが現状です。

 調査によれば、睡眠時間が5時間以上6時間未満の人の8割以上、5時間未満の人にいたっては9割以上が、睡眠が足りない、睡眠の質に満足できない、日中に眠いなどの不調を訴えているというような現状もあるようです。

 睡眠時間が短くても日中に不調無く過ごせていた人は、睡眠時間5時間未満の成人の0.7%、5時間以上6時間未満では3.5%であったことからしても、実際にショートスリーパーと分類されるような人は、非常に少ないと考えられているようです。

 睡眠は、単に寝ているということではなく、深いノンレム睡眠と浅いノンレム睡眠、さらにはレム睡眠を周期的に繰り返すように出来ています。
 
 特に徐波睡眠とも呼ばれる、深いノンレム睡眠は一般的に入眠後すぐに入るとされています。この徐波睡眠は、日中に活発に働いた大脳皮質を休息させるために必須の睡眠とされており、ヒトを中心とした霊長類にとって徐波睡眠による脳の休息時間は死守する必要があるという説まであるそうです。

 また、レム睡眠は徐波睡眠と同様に記憶の整理に深く関わるほか、感情の調節などやはり人間にとって重要な役割を果たしているのですが、徐波睡眠は睡眠の前半部分に集中する傾向があるために、一般的な睡眠不足のケースでは、睡眠後半部分にさしかかったときに起床時刻を迎えてしまうパターンが多い。

 つまり、ショートスリーパーでは本来削られることが無いはずの、後半のレム睡眠や浅いノンレム睡眠がけずられてしまい、記憶の整理や感情の調節に対してマイナスの影響が出ている可能性が考えられるということです。

 気を付けなければいけないのは、若さや体力に任せた・・・自称ショートスリーパーという睡眠不足状態の人は意外に多く、しかも、個々の睡眠時間は、多因子遺伝的に決められている身体特性として有名な身長、目や皮膚の色などと同様のものとして受け入れることが重要で、「夜遅くまで・・・」に対するご自身の価値観を見直す必要があるのかもしれません。




同じカテゴリー(身体のしくみ)の記事画像
運動と腸内細菌
「甘いもの好き」と微生物との関係について考える
メンタルヘルスと環境づくり
環境の変化と自律神経との関係を考える
プロバイオティクスは子どもにも良いのか?
社会的孤独と健康の関係について考える
同じカテゴリー(身体のしくみ)の記事
 運動と腸内細菌 (2025-05-23 10:42)
 「甘いもの好き」と微生物との関係について考える (2025-05-16 15:00)
 メンタルヘルスと環境づくり (2025-05-09 16:42)
 環境の変化と自律神経との関係を考える (2025-05-02 10:26)
 プロバイオティクスは子どもにも良いのか? (2025-04-25 15:17)
 社会的孤独と健康の関係について考える (2025-03-28 15:54)

Posted by toyohiko at 16:20│Comments(0)身体のしくみ
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。