2024年01月26日
睡眠と子どもの発達の関係を考える

子どもの健やかな発達・・・は、誰もが願うことだと思います。子どもに気になる行動があったり、周りの子よりもできないことが多かったりすることで、自分の子と周りの子どもと比べて、「これが出来ていない」「発達が遅くて不安」と思うことは、当然の事かと思います。
もし、発達障害と呼ばれるような症候であるのであれば、二次障害と呼ばれるような周囲の無理解による放置によって悪化することを避けるという意味で、早期に適切な対応をするということは大切なことの一つです。
文部科学省は2000年に21世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議を実施し、その最終報告で、「通常学級にいる特別な教育的支援を必要とする児童生徒に積極的に対応することが必要」という見解を示しています。
これを受け、2002年に小中学校の通常学級の中に発達障害の可能性を持つ、 特別な支援が必要な子どもがどのくらいいるのかを把握するため、教員に対してアンケート調査を行った結果、通常学級の中には6.3%、人数にして2~3名もの「特別な支援を必要とする児童生徒」がいるという報告がなされました。
その2年後の2004年には、子どもが小さいうちに発達障害を発見して、適切な支援を行うことを推進する「発達障害者支援法」が成立しています。このような流れそのものは、適切な子どもの発達を社会で支えるという視点で見れば非常に良い事だと思います。
しかしながら、文部科学省のある調査によると、2006年の時点では、発達障害児の数は全国で7,000人足らずであったのに対して、14年後の2020年には、発達障害児の数は9万人を超えたというのです。つまり、少子化で子どもの数が減り続けている中、この14年で発達障害児の数は反比例するように増え続け約14倍になったというのです。
小児科専門医・医学博士・公認心理師でもある文教大学の成田奈緒子教授によれば、この14倍という数字に対して、「長年、多様な臨床現場を経験してきた立場からすると、この子どもたちのすべてが発達障害児にはどうしても思えません。この中に少なくない数で、発達障害の診断がつかないのに、発達障害と見分けがつかない症候を示している“発達障害もどき”と言えるような状態の子どもたちがいるのでは・・・」と疑問を呈しています。
成田奈緒子教授は、「私自身の約35年にわたる研究・臨床経験を踏まえても、本当に発達障害と診断されるお子さんはそこまで多いわけではない・・・」と言います。
この状況について、教師や親御さんの子どもを見る目の中に「発達障害」という選択肢が1つ追加されたことにより、「この子も、発達障害なのかもしれない」と思う方が増えてしまったという可能性を考えれば、「先生の話を無視して歩き回る子」、「みんなと同じ行動ができない子」、「すごく不器用な子」という、いままでは、少し手がかかるだけと思われていた子どもたちが、発達障害という枠に当てはめられるケースが増えてきたと考えることも必要になってきたと言うのです。
発達障害は「先天的な脳の機能障害」と定義されるため、診断のためには「生まれたときからの生育歴」を含め診断基準に照らし合わせる必要があるのですが、生育歴にまったく問題はなくてもあたかも「発達障害のような行動」が見られる子どもが多くいるというのです。
このような子どもたちによく見られるのが、生活リズムの乱れと、テレビやスマホ、タブレットなどの電子デバイスの多用です。
生活のリズムに一番大切なものが、睡眠です。また、様々な電子デバイスは、光源を直接見るという行為につながることが多く、視神経を通じて脳をはじめとする多くの神経系に強い刺激を与えるために、睡眠にも大きな影響を与えると考えられています。
特に、子どもの成長の過程においては発達段階によって必要な睡眠時間は異なってきます。従って、一緒に生活している大人と同じ睡眠時間では足りていないということを認識しておく必要があります。
また、睡眠は脳の発達にも重要な役割をしています。睡眠不足が原因のイライラが、多動の症状に見えたり、不規則な食生活が原因で偏食に陥りイライラするなど、睡眠の質の低下につながるような不規則な生活のリズムがもたらす子どもへの影響が、発達障害と呼ばれる症候が似ている・・・ということも意識する必要があるというのです。
とはいえ、子どもだけ先に・・・も難しいかと思いますので、一緒に生活する大人自身の生活リズムを見直すことで、子どもの状態の変化につながるというケースも実際にあるという報告もあります。
家族や身近な人のために、自分自身の睡眠をもう一度考え直してみることも大切なことかもしれません。