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2014年10月09日

フレンチパラドックスを考える

フレンチパラドックスを考える

 皆さん、「フレンチパラドックス」という言葉をご存知でしょうか・・・? この言葉は知らなくても、「赤ワインは、身体に良い・・・」という言葉を聞いたことのある方は沢山いるかと思います。

 この話は1992年にフランスの疫学者ルノー博士よって、医学誌「ランセット」に掲載されたことで、世界中で認知されたのですが、動物性脂肪摂取量の増加に伴い、心臓疾患などの死亡率の増加に対する懸念が高まる中、同レベルの摂取量のイギリスとフランスの心臓疾患による死亡率に大きな差がみられたことから、食生活に注目し、食の組み合わせに着目し、この2国間に大きな差があるワインの消費量との相関関係から、疫学的に導き出したという研究結果です。

 そこでは、「動物性脂肪の摂取量」から「(ある係数をかけた)ワインの摂取量」を差し引いた値と「心臓疾患での死亡率」との関係を調べると、極めて高い相関関係が認められるということを統計的に導き出しました。

 さらに、ワイン消費量が明らかな17カ国についても、解析の結果「脂肪を摂取する量−ワインを摂取する量」が心臓疾患による死亡率の相関関係があることが示されたのです。

 そこで、重要なのは、この論文中で「ワインが心臓病の予防になる・・・」とか「動脈硬化を防ぐ・・・」というような表現をしているわけではないのですが、この相関関係が示すことに関して、「リスク軽減・・・」か、それ以上の効果の期待する人たちも多いのではと思います。

 人の健康については、身体の中で起きていることなので、複雑で「こうすれは、こうなる・・・」というような単純なものではありません。しかし、ひとつの事例が都市伝説のように、広がり、さらに経済的価値がついてくることによって一人歩きしてしまったり、企業や業界ぐるみで、不確実かもしれない事例を利用して、マーケット拡大に向けて、戦略的な投資までしてしまうケースも少なくないような気がします。

 つまり、疫学によって示された結果は、統計的に相関関係が高いということだけを示しているのであって、身体のメカニズムを解明していることとは違うということを承知していないといけないということです。

 その一方で、正体不明の現象が起きた場合に疫学によって、「何かが起きている・・・ということを明らかにする力があるという効果もあることを理解しておく必要があります。

 私たちは、どうしても「自分に都合の良い結論」だけを欲しがる傾向にありますので、どのような性格の情報かを確認もせずに、うのみにしてしまうという弱みがついて回ります。

 とはいえ、「これは、自分にとって良い・・・」と思いこむことは、プラセボ効果も含め悪いことばかりではありません。
世間に流通している情報を自分のためになる情報にするためにも、情報の質をよく理解することは大切ですね・・・。




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Posted by toyohiko at 16:01 │社会を考える