2014年09月20日
歯周病と身体の病気

歯周病と言えば、10代で約1割・・・60代については5割にのぼるといわれる、歯にまつわる病気の代表格です。最近では、虫歯よりもこの歯周病のほうがむしろ問題にされている口腔内感染症のひとつです。
ご存知の方もおられると思いますが、口の中には(口腔内)、約700種類、90億にも及ぶ細菌が、存在するといわれています。これらは、腸内細菌叢と同じように、良い菌、悪い菌、どちらでもない日和見菌が共生し合いそれぞれの宿主の口腔内菌叢が成り立っています。
そして、口腔内の病気のほとんどは菌が原因となって発症していることが分かってきています。
虫歯であれば、乳酸球菌の1つであるミュータンス菌が分泌する酸が歯を溶かしてしまうことによって発症することが分かっています。「乳酸菌飲料が虫歯の直接的な原因になる・・・」という社会的な誤解も原因菌であるミュータンス菌が乳酸菌の仲間であることからと考えられています。
また、歯周病についても、歯周病の関わる原因菌の解明が進んでいます。P.gingivalisなどは代表的な菌ですが、最近では、原因菌の可能性として、そのほかの菌も取り上げられておりまだまだ、未知の部分も多いとされています。
以前から、口腔内の状況がその他の疾患に関わりがあるということは、言われてきましたが、具体的な因果関係を示唆するような研究も行われつつあります。
そのような中、最近歯周病と動脈硬化やHIVも含めた潜伏感染ウィルス感染の再発などのリスクについての研究もあります。
日本大学歯学部細菌学教室の落合邦康教授らの研究によりますと、動脈硬化が起きている血管のプラーク内に歯周病の原因菌が発見されており、歯周病感染による脂質酸化が起きることによって動脈硬化の進展に影響を与えている可能性が示唆されていたり、歯周病原因菌が産生する酪酸が、局所的な免疫システムに対しての阻害要因となりHIV、結核、ヘルペスウィルスなどのウィルス自身の潜伏性が高く、発症までの潜伏期間が20年にも及ぶものに対する発症リスクが高まるなどの問題なども指摘されつつあります。
特に、歯周病の場合は口腔内のみならず歯の神経から色々な所に繋がってしまうことを考えると、日頃からの予防をしっかりする必要があります。
具体的は、虫歯も歯周病も同じですが原因菌の培地となるプラーク(歯垢)をつくらないことが、1にも2にも大切になってきます。そのためにも、定期的に専門的な口腔ケアも必要になってくるかもしれません。
次には、しっかりと唾液を出す生活習慣にすることです。皆さんもご存じのように唾液は、体内に入って最初の消化液です。ドライマウスに象徴されるように、この消化液かつ消毒液が少なくなれば、プラークの生成についても生成しやすくなるということになります。
唾液をしっかり出すには、よく噛む習慣を身につけることです。最近では、美味しいもののキーワードには、「あまい」「やわらかい」という言葉が、必須になっていますが、やわらかいものばかり食べていてもいけないのかもしれません。
さらに、人間は咀嚼することで、脳に刺激を与え活性化することも最近の研究で明らかになっています。最近、流行りのスムージーなども栄養バランスてきには優等生なのですが、噛む必要がないということから考えると、・・・ばかりではいけないということになります。
今までは、口の中は「虫歯予防のために歯磨きを・・・」というだけだったかもしれませんが、歯周病などを起因として、歯ぐきから全身の疾患にもつながる・・・ということになると、ただ磨くだけではなく、口腔内の環境を考えたうえで、約700種の口腔内菌叢を整えることを考えていくようなことも必要になってくるかもしれませんね・・・
Posted by toyohiko at 14:19
│身体のしくみ