身体のチカラ › 地球を考える › 代償ミティゲーションという考え方

2014年01月18日

代償ミティゲーションという考え方

代償ミティゲーションという考え方

 自然環境を守っていくためには、豊かな人間生活とのバランスが大切なのは言うまでもありません。当然、開発という名のもとに自然環境が失われることもあります。
 そういった中でも、その損失を最小限もしくは、損失をしないようにしようという取り組みや考え方があります。

 具体的には、「回避」「最小化」「代償」という三つの方法があります。「回避」というのは、開発を中止したり、別の場所で行うことにより自然への悪影響を避けることになります。
 「最小化」は、開発面積を縮小するなどして、自然への悪影響をできる限り少なくする方法です。最後に「代償」ですが、開発によって失われた自然の代わりに、開発区域内もしくは区域外で自然環境を創出したり保全、再生することで失われたものを補償するという考え方です。

 愛知県でも、2005年の愛地球博に始まり、COP10という流れの中、自然環境と豊かな社会生活の両立を目指して「あいちミティゲーション定量評価手法」というモデルも作りながら開発と保全のバランスをとっていこうという流れのもと進んでいます。

 この代償という考え方で難しいのは、自然環境という元来持っているポテンシャルのように、評価が難しいものをどのように評価するかということだと思います。
 単純に、緑地面積の辻褄が合えばそれで良いということにはなりにくいのが現状です。当然、そこに存在する生態系の影響というものを考えなければなりませんし、微生物から、大型哺乳類の移動などの事も加味していくと、非常に広範囲での影響を考えなければなりません。

 また、自然環境の一番の基礎になっている土壌のことを考えれば、歴史をたどっていけば河川の影響を大きく受けているために流域という概念も必要になってきます。さらには、河川だけはなく、海に対しての影響を及ぼすケースも考えられる場合もあります。

 近年、有明海の海苔の問題が話題になっていますが、海苔などは海洋汚染の影響よりも治水や利水のためのダムや落差高の影響もあり中山間地域からの栄養分の流入が少ないことに加えて、河口付近の浄化施設で栄養分が浄化され綺麗になりすぎてしまったために、今までの海洋生態系を支えていただけのリン分が賄えないというような話も耳にします。

 当然、このような現象は常緑針葉樹林の放置など、複雑な要因が重なっていますので一概に結論づけるには難しいものがたくさんあります。しかしながら、「水」という視点で考えていくと、水質及び水温と生態系というものは思った以上に密接な関係がありますので、水系に対する影響というものは考えていく必要はあると思います。

 また、かつての「里山」がそうであったように、自然環境を人間の活動も実は非常に密接に関わっているために、放置しておくことによって生態系のポテンシャルが下がってしまうことのほうが多いということを考えなければなりません。
 例えば、西三河の知多半島地域では、放置竹林の増大化が深刻化しています。しかしながら、竹を使って手筒花火などを上げているような地域では、竹林が地域の文化と密接に関わっているために、そのような深刻な話までには至っていません。

つまり、現在の私たちの周りにある自然環境は、人間が適度に関わり続けることによって保たれているという現実があるにもかかわらず、文明的な生活のなかで、その担い手や自然環境との関わりが少なくなって来ているというのが現状です。

自然環境と豊かな人間生活とのバランス・・・「豊かな」という価値観も含めて、様々なハードルがありそうですが、自然の持つ本来の壮大な力を軽視することなく、一人ひとりが考えて行動して行かなくてはいけないような気がします。


同じカテゴリー(地球を考える)の記事画像
マイクロプラスチックとリーキーガット
ポスト化石資源としての微生物の可能性について考える
身近な自然を知ることから始めよう
絶滅危惧種川ガキの再生とグリーンインフラ運動
マイクロプラスチックの人間の身体への影響を考える
グリーンインフラの実践と地域コミュニティ
同じカテゴリー(地球を考える)の記事
 マイクロプラスチックとリーキーガット (2025-02-14 09:19)
 ポスト化石資源としての微生物の可能性について考える (2025-01-31 13:41)
 身近な自然を知ることから始めよう (2025-01-17 12:06)
 絶滅危惧種川ガキの再生とグリーンインフラ運動 (2025-01-10 12:22)
 マイクロプラスチックの人間の身体への影響を考える (2024-11-29 09:53)
 グリーンインフラの実践と地域コミュニティ (2024-09-20 16:42)

Posted by toyohiko at 14:45 │地球を考える