2011年05月20日
食べ物によって失われる水と大地

目の前のトマトが食べられることなく残念にも捨てられてしまった場合、トマトがもったいない・・・とか、このトマト1個分の栄養素でどれだけの人の空腹を満たすことができるか・・・
ということが考えられると思いますが、問題はトマトの栄養素だけではなくそれを栽培すするのに使われた資源です。
逆に言うと、誰も食べない食べ物を生み出すのにその資源が費やされなかったら、代わりに何をすることができたか・・・ということです。
みなさんもご存じの通り、日本の食料自給率はカロリーベースで40%といわれています。つまり、食品のほとんどが海外の資源を利用していることになります。
そのひとつは、「水」です。これは、バーチャルウォーターという言葉があるように農作物や家畜をそだてるための水資源が消費地に移動しているという考え方になります。2005年の環境省の資料によりますと、年間にバーチャルウォーターというかたちで日本に入って来る水の量は800億m3にのぼり、世界中で使われている農業用水の約16%にもなります。
水不足は世界でもっとも逼迫している問題であり、食べ物を無駄にすることによる水の無駄は、私たちが風呂、トイレや洗濯に使う量をはるかに上回ります。もし、25%の食べ物が無駄にされているとしたら、それは世界中で1,275億m3の水が無駄になっていることになります。
しかしそれだけでなく、その水を育んだり作物を育てる大地という資源に注目する必要があります。農作物の需要と土地の需要は密接に関係しており、バイオエタノールの関係で2007年から2008年に農産物の需要が急増した時には、ブラジルの農地価格が急騰しアマゾンの熱帯雨林を伐採して農地を増やすための有効な動機になったとされていますし、また同時期ケニアでもサトウキビの需要が増え、環境的にも貴重な湿地のであるタナ川の21,000ヘクタールあるデルタを農地化する決断につながったといわれています。
他にも、韓国の会社がマダガスカルに国内の食料供給安定のために100万ヘクタールの土地を借りる契約を結んだり、日本企業を親会社に持つ会社がブラジルの農地を10万ヘクタール買収したりと世界中で行われています。こうした農地は世界中に日本の国土の約20倍の760万ヘクタールもあり、FAO(国際連合食糧農業機関)などは、自国民を犠牲にした金持ちの国のために食物を生産する新種の新植民地主義という表現もしているようです。
しかしながら、途上国にも食品供給業者など先進国の無駄遣いの恩恵にあずかっている人がいることも確かですが、持続不可能な需要の高まりの恩恵にあずかれる人はごくわずかで、かえって社会的格差を起こすことにもなります。世界有数のカカオの生産地である西アフリカのコートジボワールの子供たちは、カカオ農場で働いているにも関わらず、チョコレートの味すら知らないという話があるほどです。
農地という観点から見れば、酷使された土壌がからからに乾燥して作物が育たなくなったり、地下水面が下がって灌漑用のポンプが使用不能になって、広大な砂漠候補地が出来上がりますが、供給される側はただちに困ることはなく、取引先を変え次に伐採する候補地を探すだけというのが実情なのかもしれません。
私たちも、「食べ物」が手元に届くまでの背景をしっかりと見据えたうえで、食料自給率が低いからこその持続可能の在り方を考えていく必要がありそうです。
Posted by toyohiko at 17:30│Comments(0)
│地球を考える
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