2011年02月19日
乳酸菌研究のいま・・・(Ⅰ)

先日、東海乳酸菌研究会が名古屋で開催され始めて参加してきました。この会は全国の9つの地区にある乳酸菌に関する研究者の研究発表及び情報交換の場ということなのですが、参加者は各地区の大学の研究者や各県の衛生研究所などの行政の研究機関の方々が中心です。
当然、大学などの専門の研究者の方々の発表なのでそれなりの知識がないとわからないことが多かったこともあり、個人的には少々難解な場面でした。
乳酸菌の研究といっても実は人間に関わる微生物全般のことになっていますし、免疫システムから始まり身体の仕組みそのものを研究するということになりますので非常に範囲が広いのが現状です。
その中で感じたことは、最近の乳酸菌研究のほとんどは遺伝子レベルでの議論になっているということです。
もうひとつは、日頃メディアなどで断定的にイメージしている情報も含めて、まだまだ未知の世界が多いということを改めて認識させられました。
興味のあった報告の1つ目としては、世界中では乳幼児の利用する粉ミルクが細菌性髄膜炎や壊死性腸炎を引き起こすリスクのあるCronobacterという属の菌の汚染率が30〜40%もあり、健常者には感染しても無症状で問題ないように見えるが、低栄養の乳児などの健康維持に対して問題になっているということ。
2つめは、歯周病の原因菌に関する研究の報告件数が多かったということです。皆さんもご存じのとおり歯周病の最大のリスクは歯そのものが抜けてなくなってしまうことです。口腔内菌叢という言葉があるように、単に殺菌という方法のみでなく口の中の菌のバランスによって歯の健康を考えるようになってきたことを表わしているような気がします。
一番興味深かったのが、市販している乳製品乳酸菌飲料に使用されている菌種(菌株)の乳酸菌によってメタボリックシンドロームの予防に対する有用性についての話でした。
具体的には、インスリン抵抗性と異常代謝の改善という結果がマウスでの実験結果から得られたということなのですが、詳しいメカニズムについては腸管バリア機能の向上など様々な仮説も含めまだまだ議論の最中であるというものでした。
ちなみにインスリン抵抗性とは、インスリンは充分に分泌されているけれども効き目が悪くなっているので血糖値が下がらない状態をさし、言いかえれば、「筋肉や肝臓でインスリンの作用が低下している状態」のことで、このインスリン抵抗性が生じると、骨格筋や脂肪組織などでブドウ糖の細胞内取り込みが抑えられ、結果として血糖値が恒常的に高くなり糖尿病などのリスクにもつながるというものです。
現在わかっているだけでも乳酸菌と称される微生物が20,000種以上、人間と共生しているとされる微生物の種類も以前は100種類といわれていましたが、多くの研究の成果により年々増えており今、では数百種とも1,000種以上とも言われています。
これらの研究が進むことにより、多くの人の健康に役立つことができればと思います。
Posted by toyohiko at 10:02│Comments(0)
│身体のしくみ
※会員のみコメントを受け付けております、ログインが必要です。