身体のチカラ

　人間には体内時計があって、体内時計に左右されているということば、時差ボケなどの場合も含め経験している方は多いかと思います。

　この体内時計、いったいどのようなものなのでしょうか、当然身体の中に時計が組み込まれているわけではありません。身体の一部がこのような機能をつかさどっているということになります。

　時間生物学者の井上愼一氏によると、人間は主に３つの時間機能を備えているそうです。
まず、1つ目は5年前とか10年前という長い時間の機能で記憶と大きなかかわりがあるそうです。脳の一部の海馬という部分が関与していて海馬が壊れると記憶喪失になることも知られています。

　2つ目は、1日の時間を計る時計です。この時計は身体の機能そのものにかなり関わっており、生活のリズムそのものを左右する重要なものです。

　3つ目は、分や秒などのもっと短い単位の時間のリズムで、大脳基底核の右側や小脳が関与しています。時計がなくても大体何分くらいたったということが推測できるのもこの機能のおかげで、人間特有の機能のようです。

　以上の3つの機能の中でも、1日の時間を計る時計には2つあり、目の奥の網膜の裏側の視神経から脳につながる途中の視交叉上核という神経細胞に主時計が、全身の細胞に末梢時計があるといわれており、ほとんどの動物に共通しており本能行動を司るような機能だそうです。

　この時計は、通常の時計のようにぐるぐると回って次の日に変わるのではなく、体中の様々な器官に指令をおくり、その後リセットされて次の日に変わるという仕組みになっているようなのです。
　1日が、地球の自転の関係で24時間ジャストではないことなどからもこのことは説明がつきそうです。

　実際に、ドイツのマックスプランク研究所での実験結果によると、自由に照明の明るさを変えられるという条件での人間の認識する1日の平均は25時間だったそうです。

　人間の身体は、1日単位で行動や、身長、体重、血圧、体温など様々な生理状態を変化させています。これは、たとえ寝たきりになっても変わらないそうです。この時計は、われわれの祖先が10億年以上の進化の過程の中で備えもった約24時間で自転する地球という環境に適応するための計算機ということになります。

　その計算機の2つのリセットスイッチの一つが、「朝の光を眼で感じる。」ことと、「朝食を摂る」ことだということがわかってきました。
　光を感じることによって、主時計がリセットされ、朝食を摂ることによって全身の細胞にある末梢時計がリセットすることにより、1日のリズムや地球の自転の1日の誤差を修正しているのだそうです。

　このことから、人間が環境に適応することの大変さを感じると共に、「早起き」、「朝ごはん」の重要性の謎の鍵の一つもここにありそうな感じがします。