2014年11月07日
「腸内環境を知る」の今を考える・・・

最近は、テレビなどのメディアを見ていても普通に「腸内バランス」とか「善玉菌」、「悪玉菌」という言葉ができ来ています。
しかし、「腸内バランス」とは何のことでしょうか・・・?
一般的に考えられていることは、人間の腸の中には良い菌である「善玉菌」と悪い菌である「悪玉菌」。そして、どちらでもないその時の優勢な菌に影響を受けやすい日和見的な性質を持つ菌が混在しているといわれていますので、良い菌が日和見菌をリードする状態を指すのだと思います。
とはいえ、現実的にどの菌がどのように身体に作用しているか、ということについては、まだまだ未解明なことが多いことと同時に、人それぞれによって異なる菌の種類や割合がどのようになっているかを調べる手法についても大きなハードルになっているのが現実です。
腸内細菌の解析は、従来、採取した糞便を培養することで調べるということが多く行われてきました。しかし、酸素を嫌う嫌気性の菌が多く存在したりすることで、培養そものもが出来ないなどの問題点も多く、実態を把握するには難しいとともに時間がかかるというものでした。
また、メタゲノム解析という手法が確立されて、大きな前進をしたものの、この手法は遺伝子探しを主目的にしているために、多数派から少数派までくまなく解析することが難しいという問題もあります。事実、少数派細菌の遺伝子については技術的に検出限界以下となってしまい、結果的に「不検出」ということになります。
現実的に、人の身体と腸内細菌の関係を考えた時に、少数派の細菌を無視するという訳にはいかなくなります。
病原菌などの例をみても、少数派のものでも強い作用を持ったり、多数派でも日和見的な存在になっているケースも決して少なくないことを考えると、100億個vs100個というような量的に大きな隔たりがあったとしても、きっちりと解析できる仕組みが必要になってきます。
現在では、DNAの自己複製能力を利用したPCR法を利用して、より正確な菌の種類や構成をよりスピーディに知ることができるようになっています。
最近では、PCR法を利用して、便秘などの症状が慢性的に多いとされる高齢者施設の入所者にクロストリジウム・ディフィシル菌という菌保有者が多いという結果が報告されました。
この菌は、そもそも従来の方法では検出感度が低く、且つ迅速性に欠けていたためにあまり、把握ができていませんでした。また、抗生物質の影響で、毒素を出す性質を持ているために、抗菌薬関連下痢症や偽膜性大腸炎などの下痢症が発生したり、その症状が重篤化することで院内感染の対策対象として重要視されている菌種です。
実際に、腸内細菌がその宿主に対して大きな影響を持つのでは・・・
ということは、多くの研究者の関心事になっています。先日もTEDという番組で、ハリガネムシが宿主である、昆虫が水に入るような行動を支配し、捕食者である魚類との食物連鎖のつなぎ手の役割をしているという神戸大学理学部の佐藤拓哉氏の研究を紹介していました。
これらのことから考えると、腸内細菌の解明は、病気などの予防のみならず、人間の行動支配にわたるまで様々な分野での問題解決の糸口になってくることに対する、大きな期待が膨らんくるような気がします。
Posted by toyohiko at 14:46│Comments(0)
│身体のしくみ