2015年02月06日
自然欠乏症候群

「自然欠乏症候群」という言葉を聞いたことがありますでしょうか・・・?
この言葉は、2005年にアメリカのリチャード・ルーブ氏によって出版された「あなたの子どもに自然が足りない」の中で提唱された考え方で、現代の子どもたちに見られる、精神的不安定やそれに伴う、行動障害の症状などが自然と遠ざかったことによって様々な症状が発症しているというものです。
このような考え方は、古くは2,400年前にヒポクラテスが「自然から遠ざかると病気になる」という指摘があったといわれるほど、自然と健康(身体)との関係は経験的に「そうなのかもしれない・・・」と考える方も多いのではないでしょうか。
自然から、遠ざかることで私たちがどのような影響を受けるかということを考えてみますと、まず挙げられるのが「感覚の衰え」です。
人間の感覚というのは、視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚という5つの感覚で様々な情報を収集しながら磨いていきます。そのような感覚を磨くという行為を人類史以来、近代まで自然の中で行ってきました。しかしながら、人工的な空間では自然の中ほど豊かな五感のバリエーションを得られないために本来持っている感覚が衰えてしまうことが考えられます。
二番目は、「注意力の欠如」です。自然の中では上下左右あらゆるところから「何か」が起きるということが当たり前の世界です。たとえば、虫が飛んできたり、足元も建物の廊下のように平坦なわけではありません。ひょっとすると蛇が出てくるかも知れません。常に周りに注意を払っていないと怪我や事故につながることもあります。
しかし、人工の構造物に囲まれた環境ではそのような注意を払う必要はなくなるために、感覚を研ぎ澄ませる必要がなくなり、物事に対する注意力も衰えてしまうというわけです。
三番目には、「指向的集中による疲労」だといわれています。自然の中では、先ほども言いましたように五感を使って気を配る必要がありますが、このような意識は、「感覚的集中」または「無意識の注意」といわれ、研ぎ澄まされた感覚が勝手に反応してくれるために、実は、緊張した状態ではなくリラックスした状態なのだそうです。
このことは、人類が生まれて以来ずっと自然と共生してきたことを考えれば、理解できることかもしれません。
しかし、自然と離れた環境においては、意識的に何かに向けて集中する「指向的集中」になってしまい、その結果、行動が衝動的になったり、イライラや焦燥感に悩まされるようになり、その結果脳が疲れてオーバーヒートしたようになることもなるそうです。
「なんとなく、調子がすぐれないが病院に行っても病気という診断がなされない・・・」という方も、居ると思いますが、人間は自然から離れることでいろいろな悪影響を受けるということがある・・・という視点で自然との向き合い方を見直してはいかがでしょうか。