2015年04月25日
環境にまつわる「都市伝説」

みなさんも「都市伝説」という言葉を耳にしたことがあると思います。この言葉を使っている場合のほとんどは、昔から言い伝えられているけどどうも信憑性に欠けるとか、専門的な見地からみると明らかに誤解をされているという場合が多いのではと思います。
その一つとして、「木の年輪の幅が広いほうが南になっている」という話です。
秋田県立大学高度加工研究所所長の林知行氏によりますと、森の中の切り株を見てみると年輪の広い方角はまちまちであることからして、この説は正しくないということなのだそうです。
この説を、お子さんやお孫さんに教えてしまうと山の中で命を落としてしまう可能性があるということになるので、気を付けなければなりません。
この説に関して言えば、日当たりの良いところに植えられた木の成長が良いというのは事実なので、「南側の樹が良く育つ」ということについては良いのですが、ここからいきなり理論の飛躍によって、「南側の年輪が広くなる」ということになってしまって現在まで言い伝えられてきたのではないかということです。
また、樹木に聴診器をあてて音を聴く場合がありますが、多くの場合、「樹液の流れる音がする・・・」という説明が多いそうです。このケースも、実際の樹液の流れるスピードが、夏の一番蒸散の激しい時でさえ時速20cmであるということから、考えても樹液の流れる音がするとは考えにくいというのが実情で、なんらか他の音がしているというのが本当の真相なのだそうです。
林知行氏によりますと、環境に関する様々な都市伝説の中で、もっとも重大な誤解は、「木を伐って使うことは、環境破壊である」ということだそうです。
地球温暖化とCO2の問題は、様々なところで指摘され話題にもなっていますが、CO2ということでいえば、濃度を下げるためには、空気中の酸素を地上に固定することです。その中でも最も効果的に固定する方法は何かというと、植物の光合成を利用することです。
多くの方がご存じのように、植物の光合成というのは、CO2を取り入れて、O2(酸素)を放出しています。残りのC(炭素)を植物そものもに変えることで、成長を促しています。
その植物ですが、木本といわれる樹木と、草本といわれる草に分けられます。草は枯れてすぐにCO2に戻ってしまいます。具体的にいいますと、枯れて朽ちる過程で微生物に分解されCO2を排出したり、コメやイモのような炭水化物でいえば、人間をはじめとする動物が食べ、その身体からCO2になって空地中に出て行ってしまいます。
その一方で、樹木の場合は幹や枝という形をとって、C(炭素)を固定したままに出来るので、「木を植えましょう・・・」とうことになるのですが、ひとつだけ問題があります。
森林というものは、若いうちは頑張ってC(炭素)を貯め込むことができるのですが、一定の年数が経つことによってその能力が頭打ちになってしまうということです。
その能力を復活させるのには、どうすればいいのかということになるのですが、その方法というのが「木を伐る」ということです。伐ってあげることで新しい枝などがでてくることで、CO2を吸収する能力が再生するのです。
ただし、伐ったものをそのまま腐らせたり、燃やしたりすれば再び、CO2を排出してしまうので、「木」という状態のまま、住宅などに利用することで、CO2を固定したままにすることになりますので、本来は定期的に木を伐って、「木」という形で利用することのほうが環境にも良いということになります。
産業革命以来、何かを燃焼することでエネルギーに転換し生活に利用するというサイクルができてから、「自然」というものが、「手を付けずにそのままにしていくもの」ではなくなってしまったことに、多くの人が関心を払わなくてはならなくなったような気がします。
いったん崩れてしまったバランスは、「一生、薬を飲み続けなくてはいけない病気になったようなもの・・・」なのかもしれません。
身近な環境を持続可能にするためにも、「都市伝説」といわれる根拠のない固定概念をもう一度見直すことも大切なのかも知れません。