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2015年05月01日

生きたまま腸まで届く

生きたまま腸まで届く


 「生きたまま腸まで届く」というフレーズを聞いたことがある方も多いと思います。ヨーグルトや乳酸菌飲料のパッケージや広告によくある表示です。

 この「生きたまま」に対して、そんなはずはない・・・というような疑問を感じている方が少なからずいるということも良く耳にします。
 このような、疑問を持っている方の多くは人体の仕組みについて専門的な知識を持っている方々に多いようです。

 その理由は、生きて腸まで届くために胃酸などの大きなハードルがあるのですが、そのハードルがいかに大きいかをよく知っているからです。

 胃酸は、酸性がつよくPH1~1.5と言われており、強い殺菌効果を持っています。

 そうです、殺菌効果・・・つまり、多くの菌を胃で殺してしまうことによって、感染症などから身体をまもる役割をしているのです。

 口から肛門までの消化器官は、唯一、外界から色々なものが入ってくる場所です。そのために栄養素として必要なものと、感染症などの原因菌やウィルス等の外敵を排除するための仕組みがいっぱい詰まっています。

 口腔内や胃の段階では、あまり内容を識別せずに全体的に殺菌をし、腸管内に入ってくると免疫システムによってそれぞれの外敵に合わせて対応してくるのです。

 ですから、多くの乳酸菌も「PH1の強酸の洗礼をうけて死滅してしまう・・・」という考え方も、当然当てはまります。

 しかしながら、ほとんどの生き物には、環境適応能力というものも備わっています。つまり、厳しい環境でも生き残っていくために自身の能力を強化していくことが出来るということになります。
 特に、微生物やウィルスの場合は次世代につないでいく時間スケールが短いために、比較的早く環境に対応してしまいます。よく耳にする、多剤耐性菌と言われる抗生物質が効かない細菌類もこのような過程を経て出現します。

 このような、耐性菌のような性格を持つ微生物は、人体にとって悪い働きをする者だけでなく、乳酸菌などの良い働きをするものも当然のことながら出来るというわけです。

 保健効果が認められる食品として「特定保健用食品」というものがあります。このような許可をされた食品には、「許可表示」というものが厳格に決められています。その許可表示のところを見ていただくとわかると思いますが、多くの乳酸菌やビフィズス菌を利用した食品や飲料について「生きたまま腸まで届いて・・・」というような表示があることに気づいている方もいると思います。

 この表示は、人間を対象に行われた臨床データを元に決めていますので、人体の様々な菌に対するバリアを乗り越えて、腸まで到達する耐性がある・・・ということが科学的にも証明されているということが言えるということになります。

 すべてが、きっちりと「生きたまま腸まで届く」ということはいいきれませんが、対象の食品の表示を確認して上で、自分に合ったものを健康のために選んでいただくことが大切かと思います。



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