2015年05月23日
腸内フローラとストレス

「5月病」という言葉をご存じのかたも多いと思いますが、これは、年度替わりなどによる、身の回りの環境の変化や、三寒四温などに代表される春先の気候の変化に対して、健康に関する負担の増大などの要因で体調を崩す症状のこといいますが、特に精神的なことも含めて元気がないことも含めて言うことが多いようです。
この「5月病」の大きな原因として考えられていることは、身体的かつ精神的ストレスの増大による免疫力の低下とされているようです。
その一方で、ストレスによって腸内フローラに影響が出るといわれながらも、様々なケースによって、どのような変化が起き、それが健康に対してどのような影響を及ぼすかというような研究は、まだまだこれからの課題とされているのが現状のようです。
そのような中、アカゲザルを使った実験で乳児を母親から引き離すと、三日目から腸内フローラが変化し、乳酸菌群が減少するという報告がされています。このことは、乳児のストレス関連行動と相関しているということが示唆されているということになります。
また、逆に乳児ではなく、妊娠中の母体に難聴ストレスを負荷したところ、生まれてきたサルの腸内フローラ内の乳酸菌が減少していることもしまされています。
このことは、母体へのストレスが世代を超えて子孫に「腸内フローラの変化」という形で伝搬される可能性が示されたということになります。
さらに、動物ばかりでなく人間でも、怒り、不安、恐怖などの心理的ストレスによって腸内フローラの変動があることが報告されています。
ロシアでは、宇宙飛行士の腸内フローラに関する研究で、飛行中の宇宙飛行士の乳酸菌やビフィズス菌類が減少し、悪玉菌のクロストリジウムが増えるという報告があり、日本でもJAXAで同じような研究を民間の食品メーカーの研究機関と共同で行っています。
このように、身体的・精神的ストレスが腸内フローラを変化させるメカニズムについては、免疫機能の抑制や腸管運動の変動が間接的に影響しているのではとされてきました。しかし、最近の研究ではストレス時に消化管の一部で放出される神経伝達物質であるカテコラミンが直接的な原因になっているのではというとこに関心が高まっているようです。
今までは、ストレスが免疫力を低下させるために感染症にかかりやすくなるというメカニズムをされてきましたが、ストレスによって産生されたカテコラミンが感染症の原因菌やウィルスの病原性が高まるというダブルパンチによってリスクが高まっているという説も出てきているようです。
術前に善玉菌をあらかじめ投与することによって腸内フローラを充分に整えてから、手術などの身体に対するストレスに備えるという「プロバイオティクス療法」によって、術後感染症の発生リスクが抑えられたり、入院期間が短くなるなどの症例もあるようですが、何かとストレスの多い現代社会において、ストレスと腸内フローラとの関係を気にしてみてはいかがでしょうか・・・。
Posted by toyohiko at 23:08│Comments(0)
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