2015年05月30日
便秘と自殺

「便秘」と「自殺」という一見何も関連性がなさそうなこの二つの言葉、どのような関係があるかを考えてみたいと思います。
日本の自殺者数については、3万人を割ったとはいえ、かなりの高水準で推移しているということは多くの方がご存じだと思います。この自殺者の数と失業率が連動しているということから、自殺の主な原因として不況を挙げる人も多いようです。
しかし、このような傾向は、他の先進国では見られないようで、スウェーデンの例でいえば、日本の1.5倍の自殺率でありましたが、その後自殺率は日本の半分になっており、景気の浮き沈みと必ずしも連動していないということのようです。
また、メキシコでは日本の自殺率の6分の1以下でほとんど自殺をしない国とも表現されているようです。ご存じの通り、メキシコという国は、決して経済的に良い状態とは言えない国であり、治安も決して良いとは言えない国です。
明川哲也氏は「メキシコ人はなぜはげないし、しなないのか」という書著で、日本の自殺率とメキシコの自殺率の理由について次のように述べています。
世界各国のタンパク質摂取量における、インゲン豆などの豆類の比率を、その国の自殺率と比較すると、食物繊維を多く摂っている国が自殺率が低く、食物繊維の摂取量の低い「便秘国家」が自殺率が多いという結果が出たというのです。
メキシコでいえば、食物繊維の摂取量の多さもさることながら、排便時の便の量も世界でも上位を占める多さであるといわれています。
これらの因果関係について明川氏は、食物繊維は腸内細菌のエサになることは良く知られていますが、そのエサが多いことによって腸内環境が良くなり結果的に免疫力が高まります。
逆にストレスが高まると、体内にコルチゾールという副腎皮質ホルモンが分泌され、糖代謝を含め、タンパク質や脂質の代謝にも影響を与えます。このコルチゾールは過剰に分泌されるとNK細胞の活性が阻害されることが明らかになっていますので、食物繊維の摂取量による腸内環境への影響が、結果的に免疫力を低下させ「生きるチカラ」に大きく影響を与えるのではという仮説を述べています。
また、「自殺」というものは「脳」の状態に大きな影響を受けるというのは、言うまでもありませんが、「腸と脳の関係」に関する研究が進むことによって、色々なことが分かってくるのかも知れません。
日本では、まだそのようなことはないのですが、中国などでは、心理研究所に細菌学の研究者がいることはあまり珍しくないようで、「乳酸菌とうつ病、さらに自殺予防」という研究テーマを掲げている方もいるようです。
中国科学院・心理研究所の金鋒教授などは、もともと人類遺伝学の専攻だったのですが、遺伝子の研究では説明がつかないことに対する、答えの一つとして乳酸菌の研究を始めたというケースもあるようです。
「便秘」と「自殺」この二つの言葉が「腸内環境」という言葉でつながり、社会に影響を与えるような研究結果が出てくることが、将来あるのかもしれませんね・・・