2015年06月05日
幸せホルモンとコレステロール

コレステロールといえば、多くの皆様が「摂りすぎには注意が必要・・・」など比較的悪いイメージでとらえている方が多いと思います。
このコレステロールに関する議論では、専門家の間でも心筋梗塞などの循環器系疾患のリスクが高まるために制限すべきだ。という考え方もあれば、コレステロールの量がやや多めのほうが長生きであるというような研究結果が出てくるなど、私たちのような一般的な人間にとっては、どのようにすればいいのか迷っている・・・という方も多いのではと思います。
そのような状況の中、厚生労働省が今年の4月に改定された「日本人の食事摂取基準(2015版)」で、食事から摂取するコレステロールの基準値が撤廃されました。
この基準は、平成16年から生活習慣病予防として、成人男性750mg、成人女性600mgと目標値として設けられていましたが、基準を撤廃した理由として、「目標値を設定するのに十分な科学低根拠が得られなかったため」として厚生労働省栄養指導室が説明しています。
今まで、多くの場面でコレステロールは、いわば「悪者扱い・・・」を受けてきましたが、コレステロールそのものは、脳内脂質の20~30%を占めてることや、あらゆるホルモン、などの原料になっていることが分かっています。
また、体外から摂取して補給するだけでなく、肝臓を含めた様々な臓器でつくられており、身体全体での必要量をコントロールしているとも言われています。
確かに、血中コレステロールが高いことによって、動脈硬化が進み循環器系の疾患のリスクが増えるといわれていますが、その一方で、コレステロールが低いことによるリスクに関する研究結果も出てきているということも事実です。
例えば、日本脂質栄養学会では「コレステロール値は、高いほうが長生き」という指針をまとめていますが、さらには、「コレステロール値が低いほど暴力的になる」、「コレステロール値が低い群に、自殺、他殺、事故死が多い」「うつ病患者は、コレステロール値が低い」などといった研究事例が次々と発表されています。
浜松医科大学の高田明和名誉教授によると、「幸せホルモンといわれる、神経伝達物質のセロトニンを細胞内に取り込むためにもコレステロールは必要であり、細胞膜のコレステロールが減少すると、細胞膜にあるセロトニンを取り込むレセプターの力が弱まり、その結果、細胞内のセロトニン量が減って精神状態が不安定になる。」と指摘しています。
また、食事療法や薬物療法でコレステロールを下げることによる、心筋梗塞になる人がどれくらい減るかという調査も世界各地で行われています。
それらの調査では心筋梗塞による死亡率が下がるものの、がんや自殺、事故死が増えることも指摘されています。1990年に発表された、イギリスの調査によりますとコレステロール値を下げることで、心筋梗塞での死亡率が15%減少しましたが、がんの死亡率が43%増加、自殺や事故に関しては76%も増加し、全体の死亡率では7%増えたという結果だったそうです。
これらのことから考えると、コレステロールは幸せホルモンであるセロトニンの量や精神状態に、深く関係しているということになりそうです。
さらに、セロトニンの多くは腸管の周りの神経細胞につくられていることや、コレステロールと肝臓が大きく関わっていることからしても、腸内腐敗による肝臓への影響もふくめ、腸内フローラとの関わりも注意していく必要がありますね。