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2015年07月04日

免疫システムと炎症

免疫システムと炎症


 「炎症」という言葉は、日常の中で思った以上に身近なものです。疲れた時の筋肉痛や虫さされなどによる腫れやかゆみ、疾病による発熱など様々です。

 「炎症」というのは、一般的に言いますと「腫れる」という生体の生理現象です。これは、異物が入り込んでしまった場合にその異物を排除するために腫れる必要があるためだとされています。

 怪我をすれば、患部やリンパ節が腫れるし、インフルエンザにかかれば発熱するようになっています。これを生理的炎症(急性炎症)と呼んでいます。

 この炎症というものをコントロールしているのが免疫システムです。

 免疫システムが、この炎症を必要な時だけ起こしてくれるようであれば、問題はないのですが、異物が排除された後も炎症が遷延して慢性化してしまうことがあります。
 このような状態が、関節リウマチや多発性硬化症などの自己免疫疾患を誘発するような炎症性疾患が起きやすくなってしまい慢性炎症(病的炎症)と呼んでいます。

 また、免疫システムには以前から申し上げているように、自然免疫と呼ばれるものと、獲得免疫と呼ばれるものがあります。
 自然免疫の代表的なものは、NK細胞やマクロファージと呼ばれるもので、獲得免疫は目免疫系を統率するといわれているT細胞やB細胞などです。自然免疫は、いわば外敵とされるもの全体に対して、攻撃するマルチプレーヤーみたいなもので、獲得免疫は特定の外敵にさらされた経験にもとづいて次回からそのようにならないように、特定の外敵を想定してしっかりと準備した結果身につけたものなので、その特定の外敵に対しては極めて強い効果を発揮するという特徴があります。

 その中でも、加齢によるT細胞の減少が免疫システム全体の低下や変化につながるということで、注目が集まっています。

 愛媛大学大学院医学系研究科の山下正克教授によりますと、このT細胞は前駆体と呼ばれる前段階の造血幹細胞が骨髄でつくられ、心臓の上部にある胸腺という臓器で訓練されてT細胞になるといわれています。

 その胸腺は思春期で最大になりますが、その後50歳前後で退縮して殆どが脂肪組織に置き換わってしまうために新しいT細胞が供給できなくなってしまいます。
 また、T細胞ができる過程で自分の体を攻撃目標として認識してしまう危険なT細胞や、外敵(抗原)を認識しないような失敗作ができることもありますが、胸線でそれらの細胞を取り除く機能が備わっているそうです。

 つまり、胸腺の退縮によってT細胞が少なくなることで、必要な時に炎症を起こし外敵を排除する機能が衰えてしまうだけでなく、慢性炎症を引き起こしやすくなり自己免疫疾患のリスクも高まってしまうことになるそうです。加齢による感染症やアレルギー、自己免疫疾患などの増加もこのようなメカニズムによって起こるとされています。

 山下教授らのグループは、エピジェネティクス呼ばれる「使う遺伝子」と「使わない遺伝子」を必要によって選択をするシステムの研究を通じて、メニンという分子がT細胞がより長く身体に機能するために大きな関わりを示すメカニズムの研究を進めているそうです。

 癌の免疫細胞療法というものがありますが、この療法は癌抗原にたいする特異的なT細胞を培養して患者に戻すという方法がとられているのが一般的だそうです。

 これらのことからすると、自分自身の身体のことをもっと知ることで、T細胞をいつまでも元気に・・・しておきたいものですね。




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Posted by toyohiko at 17:32│Comments(0)身体のしくみ
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