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2015年07月11日

ネット依存症とデジタルデトックス

ネット依存症とデジタルデトックス


 「デジタルデトックス」という言葉をご存知でしょうか。デットクスという言葉の通り体内に溜まった毒物を体内から出すようなときの表現で使われます。これにデジタルがついているということなので、一般的には「デジタル機器から距離を置く」という取り組みを言い「ネット断食」とも言われています。

 このような取り組みは、大企業などでも取り入れているところが出て来ていると言う話を良く耳にします。特にここ数年のスマートフォンの急速な普及に伴いそのような動きも出てきているようです。

 私自身は、日ごろの生活で電車に乗って移動するということが少ない生活をしていますが、電車などに乗ると年齢や男女に関わらずほとんどの人がスマートフォーンの画面を注視しているとういうことは、もう珍しい時代ではなくなってきています。

 インターネットやそれにアクセスする為の携帯電話やスマートフォンは、生活の利便性の向上など色々なメリットがあることで、進化普及してきたのですが、なぜここに来て「デジタルデトックス」なのかということをもう一度確認する必要があります。

 それは、健康も含め社会への影響の懸念が顕在化してきたからです。

 子どもたちの世界で言えば、2013年に仙台市で2,319人の中学生を対象とした調査で、携帯電話とスマートフォンの使用時間と成績との関係で、長時間の利用によって成績が下がっているという結果が発表されました。
 調査に関わった東北大学加齢医学研究所の川島隆太所長は、「スマホを使いすぎることで、学校で学んだことが頭の中から消えてしまう。」という解説までしています。

 現に、韓国では若年層のネットへの影響が社会問題化し、2011年から個人のID番号で識別する方法で、深夜0時から6時までは16歳未満のオンラインゲーム接続を禁止する「シャットダウン制」を導入し、さらに翌年、18歳未満のオンラインゲーム利用時間を親が管理する「ゲーム時間選択性」というものが施行されています。

 このことの是非については、色々あると思いますが、なぜ、このような方法をとったほうが良いのかということを社会全体で理解しなければいけないのではと思います。

 つまり、ネット依存症といわれるものが、「意志が弱い人・・・」という領域を超えた「脳の症状」であるということだからです。

 多くの依存症といわれる症状がそうですが、脳が一定の刺激を求め続けてしまうという特性になってしまうとともに、もっと強い刺激を求めるようになるという共通点があります。これは、ギャンブル依存症やアルコール依存症も同じことです。

 このようなメカニズムに大きく関わっているとされているのが、神経伝達物質の一つであるドーパミンという物質です。このドーパミンは、「うれしい」「面白い」とか「楽しい」という感情を引き起こす幸せホルモンの一つとも言われています。

 このドーパミンはドーパミン神経系からつくられ、喜び、快楽、意欲、ストレス対処など脳の報酬系に関わる神経です。この神経は外からの刺激によってドーパミンをつくろうとするのですが、継続的に強い刺激が加わりつくり続けなければならない状況では、神経の疲労を起こし弱まってしまいます。

 このようにドーパミン神経が弱くなってしまうと、少々の刺激では喜びや楽しさを感じられない様になってしまうために、さらに神経を刺激する為により強い刺激を求めるようになってしまいます。

 その悪循環が、「依存症」という状況をつくりだすので、言いかえると「脳が強い刺激を求めるように身体に指令を出す。」状態になっているということなのです。
 さらに、日常の生活においても、少々のことでは、喜びや、楽しさを感じられなくなって、いわゆる「なにもやる気がしない・・・」という状態に陥ってしまうのです。

 多くの方が、ご存じのように「文字」より「画像」、「モノクロ」より「カラー」、「静止画」より「動画」のほうが脳により強い刺激として伝わります。

 よく、ネットやゲームは自動車の運転と同じだから、危険なところをよく理解し安全に・・・という表現をする方がいますが、自動車は長時間運転をしても、運転そのものに対する強い依存性はありません。
 
 しかし、ネットやゲームは人に迷惑をかけるような状態に無くても長時間続けることで脳に一定の症状が現れるということを認識することが必要なのでないでしょうか・・・

 「デジタルデトックス」とはいかないまでも、良い距離間で利便性を享受し続けるためには、身体への影響を理解したうえで良いつきい合い方をしていきたいものです。




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