2015年08月08日
知っておきたい腸と免疫の話(Ⅰ)

多くの生き物にとって、腸は重要であり有能な免疫器官と呼ばれています。また、消化器官を中心に考えると多くの生き物は筒のような形状をしているという考え方もできます。ミミズのような形をしたものを例にとるとイメージしやすいですが、その構造は実は人間も同じです。
つまり、筒の内側である消化器官は、常に外界を接している・・・ということです。
外界ということは、「食べ物」などの生命維持に対して必要なものも、当然そこに入り、接するという過程を経て吸収されていくということになります。更に、外界にあるチリや埃とはじめ、カビなどの菌類・・・さらには、感染症の原因になる細菌やウィルスなど様々な外敵も、その筒の内側に侵入しているということが私たちの身体の中で日常的に起きています。
そのような環境の中、常に外敵にさらされ健康状態を保つためには、これらの有害な外敵を排除する為の仕組みが筒の内側に備わっていることが、生命維持のために必要・・・ということになりますが、その仕組みが免疫システムになります。
人間の機能の中で唯一、栄養素を吸収できる器官である腸に免疫器官が集中しているという理由はそういったことからなのだと思います。逆に言いますと、食道や胃などは身体の内部に接することの無いただの筒という考えでいけば入口の食道や胃に免疫システムが少ないということも理解できます。
その腸の中には、様々な免疫細胞が、広げるとテニスコート一面分もある言われる細かい絨毛に覆われている腸管粘膜の真下に約1兆個あるといわれています。
腸管粘膜を電子顕微鏡で見てみると、パイエル板と呼ぶ様々な免疫細胞が集まって司令塔のような組織があることが分かってきているようです。そこで、様々な役割を持つ免疫細胞に役割を振ることによって有害な外敵を排除したりするのです。
この免疫の司令塔のようなパイエル板は、動物実験などで、無菌状態の動物では未発達のままで、免疫システムがうまく機能しないことから、数100種類100兆個あるといわれる腸内フローラがパイエル板の機能を発達させ、免疫システムの強化につながると考えられています。
さらには、腸内フローラと免疫細胞が、有害なものを排除するだけではなく、有益な働きをする細菌とは共生関係をつくろうとしていることも最近の研究で言われています。
これは、腸内フローラと呼ばれる、それぞれの個体特有の腸内細菌の構成が、ただ単に腸管免疫に棲みついているだけではなく、一部の共生細菌が免疫を担当する組織の中に棲みついて、免疫細胞とコミュニケーションをとることによって免疫システムの発達や維持に大きく関わっているのでは、・・・
ということが解りつつあるようです。
盛夏のなか・・・ 食欲にも少々不安を感じる方もいるかと思いますが、こういうときこそ「腸の働き」を見直してはいかがでしょうか・・・?
Posted by toyohiko at 12:24│Comments(0)
│身体のしくみ