2015年08月28日
絶滅危惧種「川ガキ」の保全

16世紀から19世紀の生物種の絶滅の速度は4年で1種程度だとされていましたが、高度経済成長を迎えた、1970年代以降の絶滅の速度は、1年に4万種と実にその当時の、16万倍にも上る速度になっているといわれています。
更に、これからの100年でこの速度が10倍から100倍になってくるといわれれています。
これらの現象は、人間の活動によるものであることは、疑う余地の無いことであることは多くの皆さんの共通認識なのではと思います。
その中でも、注目していかなければいけない種の一つが「川ガキ」なのでは・・・と思います。
すでに、お気づきの方も多いと思いますが、「川ガキ」というのは、人類と異なる生物種のことではなく、「川で遊ぶ子ども」たちのことです。「ガキ」という表現が、ふさわしいかどうかはという議論があるかと思いますが、以前はよく耳にした言葉でした。
子どもたちを取り巻く環境を考えた場合に、「外で遊ぶ」ということに対しては、ありとあらゆる制限がかけられ、やりたいことができない・・・と考える子たちも多いのではと思います。
しかも、そのような制限の中、「面白くなくなった外遊び・・・」に対して、オンラインゲームなど、子どもたちにとって好奇心をそそるものが、沢山世の中に出てきてるという現実もあります。
その一方で、2005年にアメリカのリチャード・ルーブ氏によって出版された「あなたの子どもに自然が足りない」の中で、「自然欠乏症候群」という考え方が提唱され、現代の子どもたちに見られる、精神的不安定やそれに伴う、行動障害の症状などが自然と遠ざかったことによって様々な症状が発症していることに警鐘を鳴らしています。
これらのことを考えた時に、「種の多様性の保存」「子どもたちを取り巻く社会の健康」の二つの視点から見ても、子どもたちが、もっと身近に自然と触れ合う機会を提供していくことの大切さを社会全体で、考えていかなければならないのでは・・・と思います。
そのためには、「自然の恐ろしさに畏敬の念を払い、楽しく遊ばせてもらう」ための充分な知恵や経験も大切です。
実際に、川でタモ網をもった親子に出会うことは全くないわけではありません。残念ながら、そこで見かける親子の多くは、親子ともどもそこに存在する自然の象徴である、生き物に出会うための手段である「生き物の獲り方」を知らないと思われる場面を数多く見かけます。
「出合わないから楽しくない・・・」、「楽しい場所ではないから、大切にしようとする気持ちがわかない・・・」というような、気持ちの連鎖があったとしたら、外で遊ぶことに対するネガティブリストだらけの環境で育った子どもたちが、自然環境を愛し、大切にしていこうという気持ちは、どのようにして醸成されていくのだろう・・・と不安になってしまうことがあります。
教科書やインターネットでは学べない、「自然に触れる」というリアリティ・・・
「良い子は川で遊ばない」という標語の立て看板が、全国の川に設置されるようになって、ずいぶん時が経ってきているような気がします。
「安全・安心」も大切ですが、行き過ぎた責任回避にならない様に未来を支える次の世代のために、絶滅危惧種「川ガキ」の保全のために知恵を出し合っていくことが大切です。