2015年09月26日
大腸菌とプロパンガス

大腸菌という言葉を聞くと、多くの方が「汚い」イメージを持つ方が多いのだと思います。もしくは、O-157など腸管出血性大腸菌のように感染すると大変・・・というような印象が強くどちらかというとネガティブイメージの強い存在である方が多いと思います。
その大腸菌ですが、数百種類に及ぶということもありますが、バイオテクノロジーの分野では、非常に注目されている存在であるということはご存知でしょうか・・・?
その理由の一つとしていわれていることが、ほとんどのヒトが腸内常在菌として持っているということもあり、研究対象として早い時期から遺伝子レベルの研究が進み、多くの大腸菌がゲノム配列まで明らかにされていることで、微生物利用としてもモデル生物というような存在になっているからだといわれています。
モデル生物と呼ばれるようになったのは、酸素があっても無くても存在できる通性嫌気性菌のため、分離・培養が簡単にできるということもあるようです。
そんな中、現在注目を集めている研究が「大腸菌を利用したプロパンガス」の生産です。
この研究は、2014年9月のネイチャーコミュニケーションでフィンランド・トゥルク大学の研究チームによって報告されたことで注目を浴びたのです。
この研究は、大腸菌の遺伝子を組み替えることにより脂肪酸経路を操作することによって、脂肪酸をつくるプロセスが阻害され、その代わりに酪酸という物質が生成されるというのです。
その酪酸に、数種類の酵素を加えることによってプロパンガスができるのだというのです。
しかも、その報告には、「持続可能な方法によるプロパンガス生産を実現した。」と紹介しています。
人間が生活していく上で、エネルギーというものは必要不可欠な存在になっています。しかも、そのほとんどが化石燃料に頼っているという現実からすれば、夢のような話なのかもしれません。
今までも、メタン菌呼ばれる古細菌からメタンガスをつくる技術があったり、シアノバクテリア(藍藻細菌)を利用して、大腸菌と組み合わせてガソリンに近い組成の有機物をつくる技術はありました。
しかし、精製するためのコストや、液体燃料ということからなる輸送コストなどのことがあり社会の仕組みの一つとして定着することは無かったという現実もあります。
そういった意味では、気化・液化の両方を比較的簡単に状態を変えやすいプロパンガスのようなものが微生物からつくるということは、本当に夢のような話なのかもしれません。
とはいえ、遺伝子組み換えをした大腸菌が自然環境中に拡散・培養してしまった場合の環境評価など、しかるべきステップがあると思いますが、「微生物のチカラ」に大きな期待を持てるのかもしれませんね・・・。