2015年12月12日
薬とコレステロール

コレステロールが高いから、薬を飲んでいる・・・という人は周りに意外にいます。このことは、コレステロール値が高いことによって心臓を始め循環器系の疾患のリスクが高くなるということで、市場規模も2,700億円にも上るといわれていることからしても、処方されている方もかなり多いということが想像されます。
このコレステロールの薬に関して、近年様々な知見が出てきています。
2012年「アーカイブ オブ インターナル メディシン」誌に発表された研究によると、コレステロール降下剤であるスタチン系の薬剤を服用する60,000人の閉経後の女性を対象に調査をしたところ、糖尿病のリスクが48%増加したとされています。
また同年、米国食品医薬局が、スタチン系薬剤が記憶の喪失や錯乱のような認知面での副作用を引き起こしうることを示唆する見解を発表しているということです。
コレステロールと脳の健康との関係については、古くから議論されていますが、コレステロールの人為的減少が、Ⅱ型糖尿病やアルツハイマー病などの大きなリスク因子なのでは・・・という仮説が有力になっていきます。
スタチンという成分は、肝臓がコレステロールを合成する能力を抑えることによって、コレステロール値を下げる働きをします。これは脳内でニューロン同士の電気信号伝達を可能にし、新しい脳細胞の成長を促すためのコレステロールの脳内での重要な役割が阻害されてしまう。ということにつながります。
また、身体の中で抗酸化物質としてや、細胞のためのエネルギーをつくりだす際に重要な役割をするコエンザイムQ10というビタミンのような物質があります。一時サプリメントとして話題にもなった事があるので、聞いたことある方も多いと思いますが、このコエンザイムQ10の代謝経路もコレステロールと同じなので、コレステロールの合成を抑制することによって、コエンザイムQ10の合成も抑制されてしまうということになります。
コエンザイムQ10低下の副作用として言われていることは、疲れや息切れ、筋肉痛、衰弱、消耗症などが挙げられています。
さらに、ビタミンDにも影響を受けるといわれています。人間の身体は、肌の中のコレステロールをもとに太陽からの紫外線にさらされることでビタミンDを生成します。
ビタミンDの化学式は、コレステロールと非常に似ていて中々見分けられないといわれるほど類似しているといわれています。コレステロールを人為的に抑えることで、生成される元が無くなってしまえば、不足してしまうとうことも理解できます。
ビタミンD不足は、骨がもろくなることにはじまり、免疫系など様々な人間の身体にとってリスク要因になるといわれています。
本来必要だからこそ、体内につくる機能があるということからしても、「コレステロール」を人為的に下げるということに対して、もう少し慎重にならなければいけないような気がします。
最近気になるのは、対象となるもの市場規模が大きすぎるために、本質的な是非よりも、一時的な経済的かつ社会的影響の方を優性するために、制度をつくる側の人たちが「曖昧さ」を利用する・・・。というようなことを感じることがあります。
Posted by toyohiko at 13:42│Comments(0)
│身体のしくみ