2016年01月16日
腸内フローラと炎症性腸疾患

昨年、おこなわれました第23回腸内フローラシンポジウムで、興味深い研究報告がされました。今回は、「腸内フローラと難病・自己免疫疾患」というテーマで各研究機関での研究経過の報告がなされています。
炎症性腸疾患といわれても、ピンと来ないかもしれませんが、潰瘍性大腸炎やクローン病などの病名を聞いた方がイメージしやすいかもしれません。
特に、潰瘍性大腸炎は、安部首相が第1次内閣の時に退任の理由になった病名として、多くの方に知れ渡りました。
このような、症状の共通の特徴は、下痢や腹痛などの症状が頻回に発症するともに、服薬などの対処療法での効能が現れにくいために、日常のが増すとともにQOLが低下し、社会的な生活に影響力が大きいことにあります。
これれらの症状の多くは、なんらかの原因によって、自分自身の免疫が自分自身を攻撃してしまうことによって起こるとされています。
さらに、近年の研究では、腸管免疫においてNK細胞などの自然免疫制御の破綻や、獲得免疫系の異常により、これらの症状が起こるということがかなり分かってきているそうです。
大阪大学免疫学フロンティア研究センターの竹田潔氏らの研究によりますと、このような症状のある人の腸管粘膜の中にも、炎症している個所と、そうでない個所とでは炎症性サイトカインと呼ばれる炎症に関わる物質の産生量が異なることが解ってきているそうで、その産生量は、マクロファージという自然免疫細胞によっても抑えられている可能性があるということのようです。
腸内フローラと免疫との関係については、近年急速に注目され、メカニズム的にも色々と解明されつつありますが、腸内フローラを中心とした腸内環境は自然免疫系に関わる免疫調整作用のに関する報告が多くなされているようです。
このような、炎症性腸疾患についても、腸管免疫のバランスの不具合によって誘発される可能性が極めて高いということになれば、腸内環境についてもっと気にかける必要なあるということになります。
ドイツでは、クローン病の原因の一つとして、マーガリンが大きく関係しているとして、発売が禁止されるという歴史があります。
これは、マーガリンの主成分である、トランス脂肪酸が腸管免疫にたいして負の影響があるということなのですが、そもそも、化学合成によって元々自然界にないものを口にするようになってからの歴史を考えてみれば、腸が未知なる物質に対して拒否反応をし、訳のわからない状態になるということは、可能性として充分考えれれる様な気がします。
近年急激に増えた、食物アレルギーや、花粉症などの症状も免疫系のメカニズムの誤作動によって起こると考えれていることを考えても、原因不明の難病とされる疾患と関係する鍵を腸内フローラが握っているかも知れません。