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2016年01月31日

ヨーグルトと乳酸菌飲料

ヨーグルトと乳酸菌飲料


 ここ数年、「腸内フローラ」という言葉とともに腸内環境をはじめひとのおなかに対する関心が、急速に高まっているような気がします。また、最近では、腸内環境を整えることによって便秘を解消した芸能人が、自らの体験を綴った本が人気を呼んでいるなど様々です。

 そこで、誰もが気になるのが「何を食べると、腸内環境の改善にいいのか・・・」という自分の身体にとって答えが出やすいための具体的食品名です。

 テレビなどのメディアに出てくる専門家といわれる方々の多くは、その答えに対して「ヨーグルト」という食品を紹介しています。
 これは、一般的に認知度が高いことや、さまざまなレシピに対する汎用性などいろいろな理由があると思います。

 ここで、肝心なのは専門家といわれる人たちが「善玉菌である乳酸菌をたくさん摂るために有効な食品」を紹介している・・・ということです。

 ヨーグルトという食品の歴史は長く、紀元前3,000年位から記録に残っているそうです。多くの発酵食品がそうであるように、そもそも人間は微生物をつかって食品の保存に利用してきました。もちろんヨーグルトもその一つです。

 ヨーグルトの健康効果について本格的な研究がされはじめるようになったのは、1908年にノーベル医学生理学賞を受賞したロシアのイリア・メチニコフの「ヨーグルト不老長寿説」からだとされています。

 その一方で、1935年に日本で販売されるようになった乳酸菌飲料は、人間にとって良い働きをする乳酸菌を日常的に摂取することで予防的に健康効果を維持してもらうために考えられた食品です。

 その当時、京都帝国大学医学部出身の代田稔博士が乳酸菌を摂るのにヨーグルトではなく、乳酸菌飲料という新たなカテゴリーの食品を考えたのか・・・ということを考えてみる必要があるような気がします。

 当時、なぜこのような食品を選んだのかという記録に関して多く残っているわけではなので、はっきりしたことは言えませんが、少なくともさまざまな理由でヨーグルトよりも「効果的に乳酸菌を継続摂取できる食品」という発想でつくられたということが想像されます。

 また、乳酸菌飲料が世に広まり始めた当時、複数の大手製薬会社から独占使用権を買い取りたいという話があったが、「予防的に毎日1本飲んでいただくのが必要だから、食品である必要がある」というような、代田稔博士の乳酸菌飲料開発にまつわるエピソードがあります。

 発売当時は、より多くの乳酸菌を摂ることができる食品ということで考えたこともあり、原料である培養液は、非常に酸味が強くそのまま口に入れることを「ピリピリ」とするほどだったために、砂糖を利用し最小限の酸味と甘みのバランスで味を調えた結果だとされています。
 また、多くの乳酸菌飲料は脱脂粉乳を使用しており、当時の原材料調達のこともありできるだけシンプルにより多くの乳酸菌を摂ってもらうための食品として世に出てきたということです。

 また、乳酸菌にもさまざまな種類があり、食品に利用されている乳酸菌の種類には、健康効果が科学的に明らかになっているものもあれば、風味のバランスをとるためだけに利用している乳酸菌など様々です。

 このような乳酸菌に関しては食品表示法で詳しい規定がないために各メーカーの自主的表示になっているので、消費者として情報を知る手段が少ないということもありますが、健康効果があるようなプロモーションをしてるのにもかかわらず、健康効果があるとされている種類の乳酸菌の割合が極めて少ないということも実際にはあるようです。

 実際に流通している商品を見てみても、ヨーグルトに入っている菌数と比較して乳酸菌飲料のほうが数10倍から数100倍であることも多いようで、「シンプルにより多くの乳酸菌を飲みやすく」という商品の基本的な考え方からしてもある意味うなずけることもあります。

 「腸内フローラをより良くすることによって、健康に・・・」に対する様々なエビデンスが出てくる中、商品の特徴を知ることで自分にとっての、「毎日1本」見直してみてはいかがでしょうか・・・?



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