2016年05月08日
腸内フローラとアルコール性肝炎の関係

肝臓といえば、「沈黙の臓器」といわれる臓器の一つですが、身体に取り込まれた様々な物質を化学工場のように加工するという身体の代謝という役割の中で大変重要な働きをしています。
具体的には、腸から吸収された、糖やたんぱく質、脂肪を体内で使える形に変えて貯蔵し、必要な時にエネルギー源にしたり、老廃物やアルコールなどの有害な物質を分解し解毒するという機能があります。
また、肝炎や肝硬変などの肝臓の機能の低下は生命にかかわる症状として、健康診断でも肝臓の機能に関する情報は常に意識していかなければならない指標の一つとして多くの方に認識されています。
そのような中、肝硬変の患者の腸内フローラに関する研究で、成人の腸内フローラで最優勢であるクロストリジウム属の細菌が、健康な人と少なく大腸菌群が多いというような報告もあり、肝機能の低下と腸内フローラの関係についても注目されつつあります。
また、実験的につくった腸内フローラを持たない無菌マウスでは、アルコール性肝炎が発症しないことなども、腸内フローラとアルコール性肝炎や肝硬変などの疾患と腸内フローラの関係に関心が高まっている理由の一つです。
当然、肝機能の低下は、生活習慣からなる部分も多いので生活習慣の改善は必要ですが、その要素に「腸内フローラの改善」という視点も肝機能改善につながるのでは・・・という議論もあるようです。
アルコール性肝炎の場合について言えば、大量のアルコールを摂り続けることで、肝細胞が一種の免疫反応によって障害を受け肝機能の低下につながるといわれています。
そのため、体内で必要なたんぱく質の生産機能が低下したり、免疫機能の乱れとともに、感染などの抵抗力も弱くなり、トランスサイレチンと呼ばれるたんぱく質の量が低下してしまいます。
久留米大学とヤクルト中央研究所の共同研究で、アルコール性肝硬変の患者を対象とし、L.カゼイ・シロタ株を400億個以上含む飲料を1日2本2週間飲用する試験で、トランスサイレンチンが高まり肝機能が改善されると当時に、CRPが優位に低下し炎症も抑えられたという結果が、学術誌Hepatology Internationalに掲載されています。
近年、腸内フローラの改善で様々な疾病の改善につながるというような関係が注目されてきています。
このことは、普段から「よい腸内細菌で、よい腸内環境保つ」ことで、予防につながる・・・という80年以上前から代田稔博士が提唱した「予防医学」の考え方が少しずつ証明されつつあるような気がします。
Posted by toyohiko at 07:45│Comments(0)
│身体のしくみ