2016年06月10日
腸内フローラとうつ病

先月、「腸内の善玉菌が少ないとうつ病リスクが高くなる」というような内容の論文が、感情障害や情動障害に関する論文を紹介する専門誌Journal of Affective Disordersのオンライン速報版で公開されました。
腸内細菌とうつ病のような脳の機能に関わる症状との関係については、以前からいわれていた事でもありますが、今回、国立精神・神経医療研究センター神経研究所とヤクルト本社中央研究所らを中心とする共同研究グループが実際の研究結果のひとつとして紹介されたということです。
研究の内容は、43 人の大うつ病性障害患者と 57 名の健常者の腸内細菌について、善玉菌であるビフィズス菌と 乳酸桿菌の菌数を比較をするという内容でした。
現在、うつ病として治療を受けている人数は 70 万人といわれ、治療を受けていない罹患者はその 3~4 倍存在するともいわれてこれからの大きな社会問題のひとつとも言われています。
また、発症の原因として、これまでに神経伝達物質の異常、ストレス反応における内分泌学的異常、慢性炎症など の生物学的な要因が提唱されてきましたが、いまだに不明な部分が多いのが現状です。
そんな中、うつ病と腸内フローラとの関係には注目をされていましたが、これまでうつ病患者を対象として腸内細菌の構成や菌数を健常者と比較した研究は殆どなく、人間のつ病 患者の腸内細菌において、善玉菌が多いか少ないかなどについての具体的なエビデンスが求められていました。
今回の研究では、うつ病患者と健常者との間で1g 当 たりの便におけるビフィズス菌の数が109.53個以下という少ないと場合には、大うつ病性障害を発症するリスクがおよそ 3 倍になること が示唆されました。
また、ラクトバチルスでは、便 1g あたり 106.49個以下の少ない菌数であったのは大うつ病群 で 65% (28 人/43)、健常者群では 42% (24/57 人)であり、大う つ病性障害を発症するリスクがおよそ 2.5 倍になることが示唆されました。
以上から、ビフィズス菌や乳酸桿菌の両者とも菌数がかなり低いとうつ病リスクが高くなることが考えられるということになります。
また、被験者のうち、過敏性腸症候群(IBS)を合併している人の割合は、健常者群では 12%であったのに対し、大うつ病群では 33%と健常群に比較して有意に多いという結果も同時に出ています。
さらに、食習慣のなかで乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を積極的に摂取している人の方が腸内の善玉菌の数が多いことはよく知られていることなどから考えると、今回の研究結果から、腸内環境を整えるような生活習慣をすることで、うつ病などのリスクを軽減できるという可能性の1歩を踏み出したのかもしれませんね。
Posted by toyohiko at 16:39│Comments(0)
│身体のしくみ