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2016年06月18日

腸内フローラとシンバイオティクス療法

腸内フローラとシンバイオティクス療法


 術前術後の感染症予防などに対して腸内フローラ等の腸内環境を整えることでリスクを軽減するような試みがなされていることは以前も紹介されましたが、今回は院内感染などで危険とされているSIRSに関連した事例を紹介していきます。

 SIRS(サーズ)は、全身性炎症反応症候群(Systemic Inflammatory Response Syndrome)と呼ばれ、外科手術、外傷、火傷、すい炎、さらに敗血症などの感染症が引き金になり全身に炎症を生じる状態をいいます。

 脈が速くなったり、低血圧、低体温、高体温、白血球の低下または上昇など症状が現れた多臓器不全等の危険な状態に陥りやすいことも良く知られています。
 特に、救急救命の医療の現場などでは患者の命を守るためにもいち早くSIRS状態を脱することが大きな課題の一つになっているほどです。

 SIRS患者の腸内フローラを調べてみると、健常な人と比べて善玉菌が著しく減少し、悪玉菌が増えていることが分かっています。
 また、その影響もあり、腸内も有機酸濃度が低下し、腸の蠕動運動不全に陥るような人もいるそうです。
 
 そのような状況の中、重篤な症状にならないように、有用菌であるプロバイオティクスとそのえさになるプレバイオティクスを併用した、シンバイオティクス療法を試してみた事例もあります。

 この事例は、SIRS患者55名を2つのグループに分け、L.カゼイ・シロタ株とB.ブレーべ・ヤクルト株をそれぞれ1億個を含んだ乳酸菌製剤を1日3回とガラクトオリゴ糖を10gを入院日から、経口で食事が出来るようになるまで、経腸的に投与したグループと投与しなかったグループとの感染性合併症の発症率や死亡率を比較したというものです。

 その結果、腸炎については非投与群が50%弱の発症率に対して、投与群は10%未満。肺炎については非投与群が50%強の発症率に対して、投与群は約20%。本来無菌であるはずの血液中に細菌が認められる状態になってしまう菌血症については、非投与群が、30%弱に対して、投与群は約10%。さらに、多臓器不全による死亡は非投与群が約25%であったのに対して、投与群が約10%といずれの場合においても、良い結果が出ています。

 特に、腸内フローラに直接関係する腸炎については、もともとの発症率が高いことも併せて大きな効果があったと言えると思います・

 腸内フローラの改善は、予防のみならず、救急救命等の医療の現場でも大きな成果を出しつつあるということのようです。「腸は身体の中で、唯一栄養を吸収できる臓器」というところをもう一度考え直しながら、腸内フローラを含め腸の健康を日頃から考えことも大切かもしれませんね。




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Posted by toyohiko at 16:27│Comments(0)身体のしくみ
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