2016年09月24日
筋肉と糖尿病

秋といえば「食欲の秋」「スポーツの秋」など、色々なことをするには良い季節です。その中でも、食事と運動という関係性と最新の研究を踏まえて考えていきたいと思います。
健康問題といえば、いまや生活習慣病と言われるほどライフスタイルによって起こってしまうと言われている病気が多くなってきていますが、その一方で、運動と健康との因果関係はまだ明らかになっているということではないようです。
例えば、運動の効果に肥満解消という効果がありますが、最近の研究では、死亡率そのものは、肥満か痩せているかということよりも生活での活動量の方が強い相関関係があるという結果が出ています。
このように、太っていても痩せていても運動によって、健康が維持されているということなのであれば運動は肥満解消とは別の健康因子であるという考え方もあるそうです。
そのような中、厚生労働省の調査によりますと、日本人の平均運動量は年々減少しており、働き盛りの30~40代ともなりますと2割程度の人にしか運動の習慣がないという報告もあります。
とはいえ、生活習慣病の筆頭であるⅡ型糖尿病についていえば、運動量療法に明確な効果があるとされていますので、「なぜ、運動が大切なのか・・・」ということをしっかりと理解しておくことも「運動をしよう・・・」という動機づけの中で重要になって来ると思います。
新潟大学医歯学総合病院内分泌代謝内科准教授の羽入修氏によりますと、運動によって、カロリーが消費されることで血糖値が改善したり肥満が是正されることは比較的メカニズムとしても説明がつき易いのですが、「食欲が適正化」したり、「脳卒中の減少」、「認知機能の保持」、さらには「死亡率の減少」についての説明になると良く分かっていなかったのが現状のようでした。
しかし、このような結果をもたらすメカニズムが理解できれば、「運動をしてみよう・・・」という強い動機につながると考えたそうです。
そこで、注目したのが脳由来神経栄養因子BDNF(Brain-derived neurotrophic factor)と呼ばれるタンパク質です。このBDNFは、脳由来という名前の通り脳の海馬や大脳皮質で合成されることが30年以上前からわかっており、脳内で全身のエネルギー中枢を担う視床下部に作用して、食欲を抑制したり糖代謝をコントロールする機能を持つと言われています。
しかし、その後の研究で人間が運動をすると血液中のBDNFが増加することが発見されるようになって、脳以外の器官でも合成されているのではという研究が進み、その後の研究で筋肉組織においても運動によってBDNFがつくられることが分かってきたのです。
筋肉を動かすには、ブドウ糖や脂肪酸の代謝で得たエネルギーが必要となるのですが、その機能を促進する作用をBDNFが果たしていたということなのだそうです。
BDNFに関する研究はまだまだ、これからだと思いますが、食欲を抑えたり、血糖値を下げる作用があることはわかってきています。
私自身もそうですが、運動をしたときの方が、かえって間食などの「ついつい・・・」というような食べ方をしなくて済むというような経験をした方も多いのではと思います。
このような、感覚もBDNFの作用だと考えれば、説明もつくような気がします。
このBDNFの作用については、脳内で合成されているものだということもあり、記憶や学習といった神経細胞の維持機能やなど、中枢神経に働きかける効果があるそうです。こうなりますと、「運動」も単純なエネルギー収支の話だけてなく、様々な健康効果を期待できるような気がします。
Posted by toyohiko at 16:06│Comments(0)
│身体のしくみ