身体のチカラ

　現在、加工食品の原産地表示の義務化ついての検討が消費者庁と農林水産省などで行われているそうです。この「原産地表示の義務化」については、TPP（環太平洋パートナーシップ協定）の影響による、海外からの安価な輸入食品に対して、国内生産品を識別しやすいようにすることで、競争力を高めたいという事情がありそうです。

　食品表示については、一番考えなければならないのは消費者利益であるというのはいうまでもありません。

　とはいえ、様々な事情が付きまとってしまうことがあるこということも現実です。

　グローバル化という流れの中、一つの食品の流通量が世界規模になっている商品も少なくありません。
　そのために、原材料についても大量に必要になってくるために主原料になるようなものについては、複数の産地から調達することで、流通量に見合った量を確保することが必要になります。

　例えば、大豆を米国とカナダから常に調達しているので、どちらかの産地のものをつかうこともあれば、両方のものを混ぜて使用する・・・という事例も十分に考えられることがあります。

　しかし、消費者の立場からすれば「原産地によって取捨選択をしたい」というニーズには応えられなくなってしまうということになります。

　特に近年では、「この産地のものが欲しい・・・」というニーズもありますが、「この産地（国）のものは食べたくない・・・」という「逆の選択」について強い要望を持っている方も多いという話も耳にします。
　特に、このような「特定の産地のものでないことを確認したい」というニーズは、海外でも非常に多くなってきていますので、輸出の時などは細かい確認が必要であることも少なくありません。
　このような場合は、水質汚染などの環境問題や政治的なところも含め、その国の姿勢を容認できないという内容のものが多いので、「そのような選択をしたい」とう当事者からすると大きな問題になっていることが多いということも事実です。

　そんな中、今回の法改正にともなう検討委員会で提案されている「3つの提案」について疑問の声が上がってるようなのです。
　「3つの提案」というのは、複数の国またがる場合には「または・・・」でつなぐことが出来る「可能性表示」、3ヶ国以上も場合は「輸入」でもよいという「大括り表示」、原産地と加工地の違いがある場合については、加工が国内であれば（国内製造）という表示で良いというような「中間加工原材料の製造地表示」という3つの例外規定の提案です。

　この制度を極端に解釈をすれば、原産地「輸入または国産」という表示が許されてしまうことになり、消費者からすれば、「ここに該当しないものって何処にあるの・・・？」というような話になってきます。

　このような提案がなされる背景としては、表示をパッケージにつけなければならないという事情が関わっているということが考えられます。いいかえれば、その都度、パッケージを変更するにはコストがかかりすぎるということになります。
　
　このような提案や食品メーカー側の事情は、消費者にとって利益になるかどうかということを考えなければならない状況になってきているのだと思います。「商品に関する情報開示は、ブランドづくりにとってプラスかマイナスか・・・」という考えが必要になってきます。

　このような環境の中、パッケージに表示するという以外の方法で詳細まで開示するという手法も選択肢として積極的に取り入れる必要があるのかも知れません。
　インターネット網の整備やスマートフォンなどの情報端末の普及に伴い、手元の端末で確認できるなどの、社会環境に合わせた食品表示の在り方というような考え方も行政側としても必要になって来るような気がします。

　食品表示については、たしかに消費者利益のためになると思いますが、大企業と中小企業というようなそのような開示手法に対する投資が「出来る・・・」「出来ない・・・」というような格差の広がりを助長するようなことも避けていかなくてはならないと思います。

　社会インフラの変化に合わせて、食品表示の在り方についても1つの場面のみ表示するだけでなく、多元的に情報が分かるような制度も期待しています。