2016年10月21日
健康な人の「便」は薬になるか?

最近、「便移植法」という治療方法が話題になっているようですが、この方法は簡単に言いますと、健康な人の腸内フローラをそのままいただいてしまうことで、疾患が治るというような方法で注目を集めています。
そもそも、この方法は偽膜性大腸炎などの消化器官の細菌による病原性感染症の治療法として、一定の成果があったということで、急激に注目が集まった治療方法です。
以前から、昆虫などの他の動物の実験で腸内細菌を入れ替えることで身体の状態や食の嗜好までも変わるということは解っていました。
昆虫というのは、食料を確保するために食べ物の棲み分けを明確にしているという習性があるために食の嗜好というのは種によって大きな差があると言われています。
このようなことからしても、腸内フローラを入れ替えることで健康状態を良い状態にするということについてはある意味、理に適っていると言えます。
この「便移植法」に関して簡単に説明しますと、本来の腸内細菌叢に関わる腸内細菌類をすべて除去することから行います。
その後、健康な人の便を希釈したものを直接腸内に入れ込むことで、移植した健康な人と同じ腸内フローラを持つ人をつくるという治療法です。
ここで、一つだけ気にかかることが「腸管免疫システム」との関係です。
知っているかたもいると思いますが、善玉菌と呼ばれる乳酸菌等を食品から摂取しても腸内に定着することはないために、継続的に摂取し続けなければ摂取した善玉菌の影響を及ぼし続ける腸内環境を保つことはできません。
ここで、宿主にとって「良い菌」か「悪い菌」かを決めているのが腸管免疫システムになりますので、全く異なる腸内細菌群を体内に入れたとしても、腸内フローラとしてうまく定着するかということについてはまだまだ課題になると思います。
免疫システムは、血液型等もふくめ色々なところに影響を及ぼしていますので、腸内細菌を入れ替えることで、理想的な腸内フローラをつくっていくという夢のような治療方法が現実のものになるのにはまだまだ課題があるのかもしれません。
また、腸内細菌の入れ替えとまではいきませんが、本人の腸内環境に合わせた菌種類をブレンドした「腸内細菌カクテル」療法というものまで最近は出てきているようです。まだまだ、未知の世界である「人の腸内フローラ」・・・脳腸相関等も含めて人体に大きな影響を及ぼしている可能性も残っていると言わざるを得ないような気がします。
人体の負の影響がないというのは重要なことになりますが、「昔から続いている方法・・・」というのも一つの目安になるのかもと考えれば、腸内フローラに良い影響を及ぼす食品を積極的かつ継続的に摂取するということの方が手軽であり、実効性が高いのかもしれません。
Posted by toyohiko at 16:59│Comments(0)
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