2016年10月28日
炎症性腸疾患と腸管免疫

近年日本で、潰瘍性大腸炎(IBS)やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)になってしまう方の数が、急激に増えているそうです。
炎症性腸疾患(IBD)の症状としては、下痢や便秘、さらには腹痛や発熱などを頻回に繰り替えし、ひどいときには下血などになってしまうことによって日常の生活(QOL)に支障をきたしてしまうケースが良く聞かれます。
花粉症などの免疫性の症状のように、「今まで、そんなことなかったのに急に・・・」という方も少なくないのが特徴の一つです。
これらの、要因としては、身体中の免疫システムの約70%もあると言われている腸管免疫の機能が正常に働くことが出来なくなってしまい、体内に入って来る外敵に対して攻撃する機能である免疫システムが、自身の腸管等を攻撃してしまうことによって腸管内に慢性的な炎症を起こしてしまう。というようなメカニズムによって引き起こされていると考えられています。
以前から、申し上げていますように、免疫システムには、本来備わっている基本機能のような自然免疫と、実際に攻撃されたことによって自己の防御の仕組みを作り上げる獲得免疫の二つの種類に大きく分かれているとされています。
日頃生活していくうえで、簡単なちょっとした風邪や、1日に5,000~6,000個出来るといわれています癌のもとになってしまうような異常細胞を処理したりする役目をするのが、NK細胞を代表とする自然免疫。
ワクチンなどを接種することにより抗体が出来るというようなものが獲得免疫と呼ばれています。
大阪大学大学院医科系研究科免疫制御学の竹田潔教授によりますと、炎症性腸疾患(IBD)の原因として、リンパ球などの獲得免疫系が原因となり自身の消化管の機能を攻撃していると考えられていましたが、獲得免疫系だけでなく自然免疫系の異常によって引き起こされていることが分かってきたそうです。
その一つとして、ここ10年、腸内フローラの解析技術が飛躍的に上がったことにより、腸管免疫と腸内細菌との密接な関係というものも次第に明らかになってきつつあるようです。
現在、マウスによる実験等では、特定の自然免疫細胞があるか無いかで、炎症性の物質を過剰に放出させてしまい、その結果、腸管内に慢性の炎症が発症してしまうこともわかってきています。
このことは、逆説的に言いますと腸管内にある特定の自然免疫担当細胞が腸内フローラに対して、マイナスの作用もすると考えられており、いわゆる負のスパイラルになってしまう可能性もあるそうです。
現状、炎症性腸疾患(IBD)の症状のある方については、特定の免疫細胞の活性が著しい状態であったり、ある種の腸内細菌が多かったり、また少なかったり・・・というような特徴的な腸内フローラの状態であることも次第に分かりつつあるようです。
現代の、難病とも呼ばれている炎症性腸疾患(IBD)・・・
腸内フローラの解析技術がさらに進み、メカニズムが明らかになってくれば、それに合うような腸内細菌を摂取し続けることで症状が回復してくるというようなことも出来てくるのかもしれません。
腸内細菌と免疫システムとの関係には、次第に明らかになっていますが、中には「免疫調整機能」というような保健効果についてエビデンスデータのある腸内細菌を身近な食品で手に入れることも可能な環境にありますので、日頃の食生活の見直しとともに、腸内環境の見直しをしてみるのも大切かと思います。
Posted by toyohiko at 17:00│Comments(0)
│身体のしくみ