2016年12月30日
「別腹」は本当なのか・・・?

年末年始は、普段なかなか合うことのできない人たちとの集まりがあったりで、「ついつい、食べ過ぎに・・・」という方も少なくないと思います。
そのような場面で、良く耳にする言葉の一つが「あまいものは別腹・・・」に象徴される「別腹」というキーワードです。これは、言うまでも無く「お腹が一杯のはずなのに、美味しそうなものが出てくると、つい食べてしまう」事をいいます。
これは、単純に「本当は、さほど満腹ではなかったのに気分が変わったので食べられる・・・」という観念的なものなのか、しっかりとした身体のメカニズムとしてそのような働きをするのかというと、「別腹」的な行動は身体のメカニズムとして備わっているというのが正解なのだそうです。
その前に、味覚と食欲との関係を少し説明してみたいと思います。
多くの方がご存じのように、味覚には甘味、塩味、酸味、苦味、旨味、辛味の6種類あると言われていますが、最後の辛みは味蕾が味そのものを感じでいるのではなく、「痛み」を味覚として感じているため栄養素を取り入れるためのセンサー機能として考えれば、五味ということになります。
つまり、味覚は「この物質を身体に取り込んだらどうなるか」を判断するシステムとも言えるのです。甘味はエネルギー源、苦味は毒物、酸味は腐敗などの信号を脳や消化器官に送るためと考えられており、これは多くの動物種において共通するところが多いそうです。また、以前よく言われていた、舌の部位によって感じることの味覚が異なるという「舌の味覚地図」的な説は根拠が乏しく、現在では完全に否定されているそうです。
ここで、味覚でどのような物資を取り入れていると言いましたが、栄養素には体内に貯蔵できるものとそうでないものがあり、そのような要素も味覚と大きく関連しているそうです。
畿央大学健康科学研究所所長の山本隆教授によりますと、それぞれの味覚の感受性は「身体にとって必要かどうかに大きく左右する」としています。例えば、腐敗物の信号である「酸味」や、毒物の信号である「苦味」は動物として回避しなければならないものになりますので、濃度が低くても感知するように出来ているそうです。
それに対して、「旨味」のグルタミン酸ナトリウムや「塩味」の塩化ナトリウム、「甘味」等はより濃度が「酸味」や「苦味」に比べて高くないと感じないようにできており、身体にとって十分に摂取させようとしているそうです。
また、糖のように体内に貯蔵できるものとそうでないものにも、味覚は大きく反応するようで、塩分などは体液以上の塩分濃度になって来ると、「これ以上摂取しないように・・・」というために、苦味や酸味を感じることが分かっているそうで、過剰になると身体にとって良くないという信号も味覚には備わっているということになります。
しかし、問題なのは体内に貯蔵できる糖質に関わる「甘味」に関する身体の反応です。糖質はエネルギー源として美味しさに満足してそれ以上摂取しなくなると栄養が不足するリスクが発生して困るために、あるときには、飢餓状態に備えて蓄えようとするわけです。
つまり、甘いものは「いくら満腹でも美味しい・・・」ということになります。
実際に、脳が「美味しいものが来た」と判断すると満腹中枢から出ていたシグナルが抑えられ、摂食中枢の活動が活発になり、胃を活発にするためのオレキシンなどが分泌されることで胃の中の食べ物を腸に送ることで胃の中のスペースを空けるのだそうです。
言って見れば、「別腹」の正体は自分自身の脳と味覚の働きにあった・・・ということになります。
この年末年始、皆さんは、この「別腹」の正体とどう戦いますか・・・?
Posted by toyohiko at 16:26│Comments(0)
│身体のしくみ