2017年01月07日
動物の感染症と腸内フローラ

人間と同じように、動物にとっても感染症は重要な問題です。ましてや、動物は感染の拡大に対する配慮や治療などの行為を自身の意思で積極的に行うことは非常に難しいと推測されることなどからも感染症予防は畜産という形で、食料として肉を頂いている人間にとっても重要な問題の一つです。
平成28年末に、名古屋の東山動植物公園での鳥インフルエンザに罹患した個体の発見や29年はじめにの豊橋での野鳥での鳥インフルエンザ罹患など、身近な問題と言える部分もあります。
人間での感染症と腸内フローラとの関係性については、色々なところで研究が進み、一定の成果が出始めていることなどから、メディア等も含め私たちの目に触れることも多くなってきましたが、これは動物においても同様の関心ごととして研究がなされています。
特に、希少な動物や家畜などは死亡率という形で感染症のリスクが出てくることもあり、事業者にとっても、経済的な損失につながって来ることも少なくありません。
以前は、家畜を中心として感染症の予防や衛生管理の面で抗生物質を利用することで生産性の向上につなげていた例も少なくなかったのですが、近年は食品の安全性や家畜由来の耐性菌の出現等を抑制するために抗生物質添加に対する規制もされるようになってきたという経緯も含めて、プロバイオティクスを中心した、動物自身の腸内フローラの改善などに関心が寄せられるようになってきています。
とはいえ、これら事についても研究レベルではある程度進んできているものの、実際の飼育現場での効能について安定した成果までには至っていないという現状があるようです。
このことは、用いられるプロバイオティクス(有用菌)の性質が十分に解明されていない事が要因と考えられています。
人間の場合もそうですが、プロバイオティクスを利用して腸内フローラを整え、その個体が本来持っている免疫機能も含めた能力をしっかりと引き出すには、「生きたまま消化吸収するための腸まで届くこと」という条件が必要だと考えられています。
人体の場合は、胃液や胆汁酸についての特性や、その性質にあった菌種(菌株)の選択や強化培養などがある程度の年月をかけて確立されていますが、家畜の場合は、それぞれの種によって胃の形状や性質、体温、さらに胃酸などの外界から菌等の外敵を殺すための機能の違いなどもあり、適正なプロバイオティクスの選択にはまだまだ至らないというところが現状のようです。
また、当たり前のことですが、動物と人間はうまくコミュニケーションが取れないためにプロバイオティクスの効果に関する評価が限られてしまうことがあります。そのなかでも、「食欲がある」というのは大きな要素の一つです。一部の動物園では、霊長類の食事にプロバイオティクスを加えることで、食欲増進効果を認めるということもあり、順調な体重の増加や維持に一定の効果を感じているという例もありますが、このケースも、利用している菌株がどの程度、有意に作用しているのかについては解りにくいところもあるという現実があり研究が進んでいるとは言い難いという部分も否めないという現状があります。
これらのことは、人間が食品や医薬品として利用するためのマーケットに比べて、小さくマーケットとしても魅力に欠けることにも起因しているという気もします。
しかしながら、社会のニーズとしてより安全でおいしいものが食べたいという要望を、大きなマーケットとしてより広がっていけば、「他の動物や植物を含めたより多くの生き物と有用微生物との共生関係がもたらす可能性」に対しての広がりに、大きな期待を寄せていきたいです。
Posted by toyohiko at 16:49│Comments(0)
│社会を考える