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2017年01月28日

母体の腸内フローラと胎児の中枢神経の発達

母体の腸内フローラと胎児の中枢神経の発達


 腸内フローラと健康に関する関心は、様々な研究が進んでいくにつれて次第に明らかになっていくところがありますが、近年では、動脈硬化や脳を中心とした精神神経分野においても社会的行動や不安傾向等に与える影響についてもヒトやマウスの実験において示唆されています。

 特に、精神神経系への関わりについては、脳腸相関も含め現代社会の大きな課題を解消していく手がかりの一つとして、近年注目を集めています。

 今回、福井大学子どものこころの発達センターの栃谷史郎特命助教授らによって行われました、「妊娠期の母体の腸内フローラがと新生児の脳の発生、発達への影響についての研究」を紹介したいと思います。

 すでにご存じの方もおられるかもしれませんが、胎児はほぼ無菌状態で生まれてきて、母親、もしくは周りの環境から細菌を取り込むことによって後天的にその個体特有の腸内フローラを形成していくことは良く知られていることです。

 だからこそ、出産を控えた母体の腸内及び膣内の腸内細菌は通常よりも善玉菌と呼ばれるような有用な菌が優勢になるとも言われており、その菌をいかにして胎児に受け継ぐかという話もでつつあります。

 さらに、その前の妊娠期においてはまだまだ未知の部分が多い中、腸内フローラと脳に関わる精神神経との関係性をマウスによって調べたのが今回の研究です。

 この研究は、妊娠9日目から16日目にかけて妊娠したマウスに対して、非吸収性の抗生物質を投与し腸内フローラの攪乱を起こした母体から出産した、仔の活動状況等を観察したものです。

 この結果、妊娠中に腸内フローラの攪乱のあったマウスの仔において、有意な低体重であったり、活動量の低下や壁沿いの移動を好むなどの顕著な特徴が見られたということです。

 また、攪乱のあった母親から生まれた、仔マウスを正常な腸内フローラの親マウスと生後1日で交換した場合においては、活動が正常に戻ったということも同時に報告されています。
これは、出生後の脳の発達が、「無菌状態からどのような菌を受け継いで腸内フローラを形成していくか」ということと密接に関わっていることを示唆しています。

 この研究を行った、栃谷助教授によりますと、妊娠期の母体の腸内フローラが攪乱されたことにより、腸内細菌の代謝に関連した胎児の成長に関わる栄養素の合成が阻害され神経発達に影響が出る可能性や、出産後、腸内フローラを形成していくうえで母親の腸内フローラの状態が脳の発達にも大きく影響を及ぼしている可能性が示唆されたとしてます。

 今回のマウスの実験によって、健全な、腸内フローラをつくるためには妊娠期の母体の腸内フローラの状態が重要であり、なおかつ脳の発達にも影響を及ぼしているということが分かってきましたが、ヒトについてはまだまだこれからかもしれません。

 とはいえ、・・・今のうちに、妊娠期の健康管理の項目の一つに「良い菌を取り入れて、増やす習慣」を追加してみても無駄ではないかもしれませんね・・・。




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Posted by toyohiko at 12:49│Comments(0)身体のしくみ
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