2017年02月10日
「乳酸菌を使った経口ワクチン」という可能性

ワクチンと言えば、予想される重大な疾病に対して自身の免疫システムに働きかけてその病原体に対してあらかじめ対抗する手段としての「抗体」をつくることによって自身の身体を守るための手段の一つです。
ワクチンの種類には、「生ワクチン」「不活化ワクチン」「ソキソイド」の3つの種類に分かれると言われていますが、それぞれの特徴があります。
「生ワクチン」は、動物などを利用して病原性を限りなく弱くしたウィルスや細菌をそのまま利用します。そのようなこともあり、自然感染に近い形で免疫システムに働きかかるので免疫の力も強く、効果も長続きするとされています。
「不活化ワクチン」は、細菌やウィルスなどの病原体を熱やホルマリンなどで処理して病原性をなくしたもので、生ワクチンを比較すると免疫システムに関する働き方が弱く、数回の接種が必要だったり、免疫に刺激を与えるために再度の接種が必要になりますが、安全性の観点なども含め現在もっとも利用されている、ワクチンの種類になります。
最後に、「ソキソイド」と呼ばれるもので最近の毒素を取り出し無毒化したもので、不活化ワクチン同様、複数回の接種や再接種が必要になります。
そのような中、遺伝子を組み換え技術を利用した乳酸菌を利用した「経口ワクチン」の可能性についての研究が、先日行われました「東海乳酸菌研究会」の研究報告会で報告されましたのでご紹介します。
先ほども言いましたように、口から入れるタイプのものは「生ワクチン」といわれるものと同じような形になるために、強い免疫効果を得られる一方で、病原体そのもの発症に至ってしまうなど安全性の面での様々な議論があります。
さらに、消化器官を通過して、腸管免疫システムに働きかけるということからしても、腸管に到達するまでの免疫システムに対する働きかけに対してのロス等のデメリットがあることも事実です。
そこで、「そもそも、免疫システムに関する働きかけをして免疫調整作用がある・・・」とされている、乳酸菌の菌株をもとに、特定の疾病に関する病原性を併せ持つ「組み換え乳酸菌」を利用することで、「生ワクチン」の強い効果と安全性という、それぞれのワクチンの長所を兼ね備えた「経口ワクチン」をつくるという可能性に対して踏み込んだ研究内容だとも言えると思います。
とはいえ、適正な乳酸菌菌株の選定や、「生菌として生きたまま」か「殺菌した状態か」等、どのような条件下が一番良いかということや、もともと病原体の要素を持った微生物のために菌そのものを腸管免疫が排出する機能に関わってくることもあり、「腸管内での定着性が低い」などの課題が多いことも事実です。
マウスの実験では、「組換え乳酸菌」を経口投与したことによって、あらかじめ目的とした抗体の産生が有意に働いたという結果が示されていましたので、このような乳酸菌のあたらなる活用の第一歩が踏みだされた・・・といっても過言ではないのかもしれません。
Posted by toyohiko at 17:24│Comments(0)
│身体のしくみ