2017年03月31日
腸内細菌が「脳」を育てる

脳が受けたストレスで、「お腹が痛くなったり、緩くなる・・・」という腸の調子が悪くなったり、腸に起こった生理的変化が脳の機能に影響を与える・・・というような、ある意味、不思議な現象が心身の関係において起きている事に対しての関心が高まりつつあります。
この関係を「脳腸相関」と呼ぶようになり、多くの研究者が関心を寄せ始めるようになりました。そのひとりである、九州大学大学院医学研究院心身医学の須藤信行教授らが、「脳腸相関には腸内細菌も関係する」という結果を、世の中に発表したのです。
今では、「腸内フローラブーム」といわれるほど、腸内菌叢や腸内細菌に関しての関心が高まりつつありますが、発表した当時は、腸内細菌研究そのものがマイナー領域であったということも含めて、評価や反応も様々だったそうです。
多くの方もご存じな部分もあると思いますが、精神的ストレスから摂食障害、睡眠障害、過敏性腸症候群(IBS)の様な症状が出てくることがありますが、マウスなどの実験によりますと、お腹の菌を人工的に全くないようにした無菌マウスは、外界からのストレスに弱く、過敏な傾向が強くアレルギーなどを抑制する力も弱いということが分かってきています。
さらに、「多動」の傾向が見られ、攻撃的な性質をもっており、「脳」の領域と考えられていた行動的特徴が見られていることも、研究でマウスを扱う技術者の間でも常識となっているというほどでした。
このような、無菌マウスにビフィズス菌を与えることによって、ストレス応答が沈静化し通常マウスと同程度になるなど、腸内細菌と「脳」との関連について様々な知見が、研究結果として報告され始めたのです。
前出の、九州大学大学院の須藤信行教授によりますと、酢酸や酪酸などの短鎖脂肪酸が中枢神経に影響を与える物質として注目されるようになると同時に、これらの短鎖脂肪酸は腸内細菌が食物繊維から産生する有用物質としても知られています。
この腸内細菌と短示唆脂肪酸、中枢神経の関係性についてメカニズムの解明が進むことで「脳腸相関」について、さらに研究が進むのでは・・・と考えられているのです。
実際に、短鎖脂肪酸はヒトでは消化が難しい、食物繊維やオリゴ糖を材料として腸内細菌によってつくられ、大腸上皮細胞のエネルギー源として利用されているのが知られています。
最近では、クロストリジウム属の腸内細菌によって多くつくられると言われている「酪酸」が「抗うつ作用」がある事が動物実験の段階で明らかにされました。
腸内細菌が腸内で産生すると言われる「酪酸」を投与されたマウスで、脳内の海馬や前頭葉でBDNF(脳由来神経栄養因子)と呼ばれる脳の成長に関係している物質が増加していることが分かると同時に、腸内細菌が脳の成長に関与している可能性に対して示唆されたということになります。
腸内細菌が、ヒトの「脳」とどのような関わりがあるかは、これから関与する物質や具体的なメカニズムなどこれから解明されることが多いかと思いますが、「良い菌は、お腹に良い・・・」だけでなく「良い菌で、頭にも良い・・・」というようなフレーズが聞かれる事も遠い未来ではなさそうな気がします。
Posted by toyohiko at 08:56│Comments(0)
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