2017年06月02日
極低体重児の発育と腸内フローラ

「母子ともに健康な出産・・・」と言うのは大切なことですが、出産の時点で標準的な体重に満たない状態で、生まれてくるケースもあるというのが現実です。
これらの理由は母体の健康を守るための早期出産など様々ですが体重が少ない低体重児をしっかり育てていくということも医療にとって大切な役割の一つです。
出生時体重が2,500g以下の赤ちゃんは「低出生体重児」と呼ばれ、中でも1,500g未満の赤ちゃんの場合は「極低出生体重児」と呼ばれいます。
このような、極低出生体重児のような場合は消化管を始め身体的に未成熟の場合も多く、母乳やミルクを適正量飲むことが難しく、成長が通常のようにいかないケースも少なくないそうです。
さらに、短腸症候群と呼ばれるような、先天的な病気でやむ追えず腸を切除し、その結果腸の働きがそこなわれてしまうケース等もあります。
これらのケースにおいては、壊死性腸炎というような腸の機能が極端に低下し炎症を起こすとともに、栄養補給がうまくできないために体力温存どころか衰弱してしまうケースも見られたそうです。
このような、極低出生体重児や短腸症症候群の二つに共通して言えることが、腸の機能が正常な状態にならないために、身体の中で唯一の栄養補給のできる腸からの栄養補給がうまくいかないということがあります。
このような、ケースにおいて、乳酸菌やビフィズス菌を用いて、腸内環境を整えることで、ミルクの飲む量を増やすことが出来るようになる等の治療が現在行われつつあります。
1997年に行われた実験では、B.ブレーべ・ヤクルト株というビフィズス菌を1日1回5億個以上継続的に極低出生体重児91名を2つのグループに分けて、4週間摂取した結果、このビフィズス菌を摂取したグループには有意な体重の増加が認められました。
また、短腸症候群のケースでは、出生時1820gで腸炎や敗血症を繰り返していた3歳4カ月の患者に対して、B.ブレーべ・ヤクルト株に加え、L.カゼイ・シロタ株という乳酸桿菌とそれらの栄養源となるガラクトオリゴ糖を加えたシンバイオティクス慮法によって、腸内フローラが改善し、食事や排便などの日常的なQOLの向上ともに、標準体重に至るような体重の増加が見られました。
特に、出産食後の乳幼児に関しては、腸内環境が体重増加等に大きな影響を及ぼしていると考えられています。特に嫌気性菌であるビフィズス菌については、自然分娩の際に「お母さんからもらう一番最初のプレゼント」として、最近は知られるようになってきました。
また、帝王切開の場合と自然分娩の場合では赤ちゃんの腸内にビフィズス菌が定着するまでの時間も、自然分娩の方が早いことが最近の研究で明らかになってきました。
赤ちゃんの健やかな成長には、お母さんの良好な腸内フローラと、生まれてからも良い菌を適正に摂取することが大切なのかもしれません。
Posted by toyohiko at 16:25│Comments(0)
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