2017年06月10日
乳酸菌と免疫調整作用

乳酸菌とお腹の健康については「腸内フローラ」という言葉が多くの方々に認知されるようになってから関心が高まりつつある分野の一つです。
近年は、特定保健用食品や機能性表示など保健効果に関しての記述がなされている食品も増えましたので、その記述から見ましても利用している乳酸菌の種類によって、保健効果は様々であるということにお気づきの方も多いかと思います。
「乳酸菌」は、乳糖などの糖類を摂取して乳酸や酢酸さらには酪酸などを代謝する微生物の総称を言いますので、まだまだ未知の部分も多いのですが、他の生物でたとえるのであれば、「哺乳類」位の大きなくくりなのでは・・・と考えられています。
実際に、人間を中心とした動物の体内や植物・・・さらには空気中に飛散しているものなど現在解っているものだけでも数万種といわれており、身体にとって良い働きをする種もあれば、虫歯の原因菌のミュータンス菌のように私たち人間にとってあまり好ましくない働きをする種もいるです。
このように数万種いる乳酸菌の中で人間の身体にとって良い働きをするものを選び出し、そのメカニズムや安全性を確認していくもの乳酸菌研究の中では大切な仕事です。
数多い保健効果の中でも、多くの方に関心があるのが「免疫」に関する作用です。中でも、特定の種類の乳酸菌において、単純に「免疫力を強くする」だけではなく、アレルギーの様な免疫反応が強く出過ぎてしまった場合に、調整してくれるような「免疫調整作用」あることが分かってきたとともにそのメカニズムも解明されつつあるようなので、その事例を紹介します。
今回の事例は、L.カゼイ・シロタ株という乳酸菌についての研究の結果解明されつつあるものですが、このL.カゼイ・シロタ株は腸内に到達すると、腸内にあるパイエル板という組織などを通じて、マクロファージなどの免疫細胞に食べられる事で、腸管免疫に作用し、身体全体の弱った免疫反応を回復したり、炎症反応などの乱れてしまった免疫を整える免疫調整作用があることは解っていました。
しかし、いわゆる免疫に対するアクセルとブレキーをどのように使い分けているかは長年解らなかったというのが実のところだったようです。
しかし、今回の研究でL.カゼイ・シロタ株の独特の細胞壁の形状が免疫の「調整作用」に大きく関わっているということが分かってきたということです。
一般的に、マクロファージ等の免疫細胞の中でも貪食細胞と言われるものは、異物と判断した菌などを食べて溶かしてしまうことで、体内での増殖を防ぎ、自らの身を守るという働きをします。
しかし、自分が食べるだけでなく、食べている最中にその菌などから様々な情報を収集し、他の免疫細胞に働きかけることで免疫システム全体に働きかける機能も持っています。
その情報のもとになっているのが、食べたときの「溶けにくさ」と「細胞壁の糖の構造」なのだそうです。
L.カゼイ・シロタ株の場合は、網目状の厚い細胞壁に、この層から伸びているたくさんの鎖状のひげの様なものが沢山はえているユニークな形をしています。しかも、このひげ状のものは糖類でできているために、マクロファージからすると、食べても溶けにくいために効果的に刺激し続ける低下した免疫に対してより効果的に作用すると考えられというのです。
また、このひげ状の糖類の組成が、炎症反応などの乱れた免疫システムを調整するためのブレーキに作用するような情報を発信することが分かってきたというのです。
このように、一言で「乳酸菌」といっても細胞の形や特性が違えば身体に対する健康効果も違ってくるということも知っておくと良いかもしれません。
Posted by toyohiko at 11:45│Comments(0)
│身体のしくみ