2017年06月30日
「生きて腸まで届く」はどうしてわかるのか??

「生きて腸まで届く」というようなフレーズを良く耳にしますが、何を根拠に生きて腸まで届いているのかを決めているか疑問に思うかたもいるのではないでしょうか。
私たちの腸内には、数100種類、数100兆個といわれる、「いわゆる無数の・・・」微生物がいる中で、どのようにして識別しているのかをご紹介していきたいと思います。
善玉菌と言われる乳酸菌やビフィズス菌には、いくつかの見分けるべき形の特徴があります。
例えば、乳酸桿菌といわれる仲間は、棒状になっていてちょうど薬のカプセルの様な形をしていますし、乳酸球菌の仲間は、名前の通り球状の形をしています。さらに、ビフィズス菌の仲間は、「ビフィッド(枝分かれした)」という言葉の意味から名前がつけられていることからも、アルファベットのYやVの様な形をしています。
これだけ、形状に特徴があるのであれば「見た目で解る・・・」と思うかもしれませんが、実は乳酸菌だけで数万種類もあると言われていますので、形で菌の特定はほとんどできないというのが現状なのです。
昔から、菌の数や種類を調べるためには「培養法」という方法があります。
この培養法は、検査対象の便を適度な濃さに薄め、さらにその菌が増えることのできる、寒天などを使った「培地」というところで増殖をさせることによって可視化しています。これは、1個の菌がコロニーと言われる集落の様なものを1個ずづつくるという特性を利用していますが、特定の菌のみを見分けるには工夫が必要です。
最近では、対象とする菌のみが好む栄養源とその他の菌を排除するための抗菌薬を合わせた「培地」を利用することで精度を高めています。
しかしながら、電子顕微鏡から知ることが出来る形状や培養することで可視化しただけでは、確実な精度で実態を知ることは難しいを言わざるをえないのが現実です。
そこで近年では、PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)といって、特定の遺伝子配列を大量に増やすことで、遺伝子分類学的に菌を特定する方法です。
この方法は、医療分野で感染源である病原体の特定や変異等を調べるためにも応用されていたり、司法の場面でもDNA鑑定という形で使われているそうです。
微生物も生物であるために、DNAをしっかり調べることで特定するという方法が主流になりつつある中で、1種類の場合では何の変哲もない働きなのに、複数の組み合わせによって思いがけない働きをする場合もあるそうです。
これは、微生物同志が何らかの交信をすることをクロストークと呼ばれていましたが、解析する方法が無くメカニズムも解らないという時期が長くありました。しかし、近年では複数の組み合わせによってできたコロニー単位でのDNA解析によって色々なことが分かるようになってきたのです。
基本的には、口から入った微生物が生きて腸まで届くこと確認するためにお腹を中を開くわけにはいきませんし、都度、内視鏡などでサンプル採取するわけにもいきません。
従って、便の中に「同じ菌が生きた状態で存在するか・・・」によって確認するのが一般的なのです。その中でも、一番難しいのが「同じ菌かどうか・・・?」を確定することになりますが、現在ではほとんどDNAレベルでの照合という形で行われているのが現状のようです。
「胃酸や胆汁酸のような強い酸にさらされているのに、生きて腸まで届くはずがない・・・」というご意見も、耳にすることがありますが、このような方法で特定されることで初めて「生きて腸まで届く」ということを証明できるということになります。
もちろん、細菌を消化管内に入れないという生体防御バリアの働きからすれば、乳酸菌のなかまの多くは「生きて腸まで届くことが出来ない・・・」ということも事実ですけどね。
Posted by toyohiko at 13:21│Comments(0)
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