2017年07月22日
ビールと腸内フローラ

暑くなってきますと、ついつい「ビールが恋しい・・・」などという方も多いのでなないでしょうか、適度なアルコールは免疫力アップも含め健康面でプラスになるというなこともあるようですが、「飲み過ぎ・・・」は身体には良くありません。
アルコールの健康面での影響につきましては、一過性のものしては、いわゆる二日酔いと言われるアセトアルデヒドによる身体の不調や、急性アルコール中毒など色々とありますが、一番怖いとされているのはアルコール性肝硬変などの慢性的な症状につながってしまうことです。
このアルコール性の肝炎や肝硬変は、大量のアルコールを長期間摂り続けることで、肝細胞が一種の免疫反応によって炎症を起こし、その結果肝臓の機能低下を招くことから始まるとされています。
アルコール性肝炎の場合は、体内に必要なタンパク質の生産機能が低下するだけではなく、免疫機能の乱れによって、感染症などに対する抵抗力の低下など身体にとって大きな影響を及ぼします。
また、近年の研究では、実験用につくられた腸内に一切の微生物のいない「無菌マウス」にアルコールを摂取させた場合にアルコール性肝炎が発症しないことや、アルコール性肝硬変に罹患してしまった人の、腸内フローラに通常一番多いと言われるクロストリジウム属の菌が少なく、大腸菌群が多いという乱れた状態であるという特徴があるということもあり、アルコール性の肝機能低下と腸内フローラとの関係にも注目されつつあります。
今回は、アルコール性肝硬変の患者に対して、乳酸菌シロタ株という菌株を使った実験がありますので、ご紹介いたします。
アルコール性肝硬変の患者37名を2つのグループに分け、乳酸菌シロタ株が400億個入った飲料を1日2本2週間飲んだグループとそうでないグループでの比較調査で、4週間の血液中の肝機能及び炎症の状態を、感動でつくられるタンパクであるトランスサイレチン濃度とCRPの二つの指標を使って調べました。
その結果、乳酸菌シロタ株を摂取したグループでは、トランスサイレチンの量が高まり、体内での炎症の程度を示すCRPも乳酸菌シロタ株を飲用しなかったプラセボグループに対して、約50%という低下がみられたという結果になりました。
腸内フローラの状況も、大腸菌群が優位に減少しクロストリジウム属の細菌が増加し、改善がみられたということです。このことは、「乳酸菌シロタ株による腸内フローラの改善が、肝機能の回復につながったのでは・・・」という可能性が示唆されています。
たしかに、「腸内フローラが乱れることで、腸内腐敗が進み肝臓での解毒機能をフル回転させてしまい、常に肝臓に負荷がかかってしまう」というようなメカニズムが働いたとも考えられますが、詳しい、メカニズムの解明には、今後の様々な研究に期待していくところだと思います。
良い菌を腸内に積極的に取り入れることで、腸内腐敗を防いで肝機能をサポートできるのであれば、「飲む前に良い菌・・・」なんて時代も来るのかもしれません。
もっとも、腸内腐敗を抑えるためには生きた菌が腸まで届き、乳酸菌などの善玉菌が産生する「酸」が必要になってきますので、アルコールに混ぜて飲むことはお勧めできませんし、飲み過ぎてしまえばそのアルコールで腸内フローラが乱れてしまう・・・ということもお忘れなく。
Posted by toyohiko at 14:47│Comments(0)
│身体のしくみ