2017年07月29日
過敏性腸症候群(IBS)と脳腸相関

過敏性腸症候群(Irritable Bouwel Syndrome)は、明らかな消化管などの異常が見つからなまま腹痛や便通異常が続いてしまう疾患で長い間原因が分からない、「難病」と言われている病気の一つです。
しかも、患者については日本人の10~15%は罹患しているというような一般的な病気になっていることもあり、今では「聞いたことのある病気・・・」というところまできているのが現実です。
この過敏性腸症候群はストレスによって症状が悪くなることについては1980年代から解っていたのですが、原因の解明には至っていないという現状の中、現在では、いくつかの特徴が分かってくることで、病気の解明に向けての断片が集まりつつあるという状態のようです。
東北大学大学院医学系研究科行動医学分野の福土審教授によりますと、IBS患者のいくつかの特徴として、「胃や腸などの消化管活動がストレスによって活発になる」、「脳波に、低振幅速波化というような顕著な特長がある」、「内臓自身が非常に微細な刺激も知覚し、健常者が感じる程度の強度の刺激についてはより強く反応する」など、様々なことが分かってきたようです。
それらのことから、過敏性腸症候群の患者は脳の「情動」を認知する部位の活性が強く、それとは逆に、「腸」の刺激によって不安やうつなどのネガティブな情動を持つという流れを持ちやすいということが分かってきたようです。
つまり、「ストレス」と「腸の刺激や異常」が相互にトリガーになりながら悪循環を促してしまっているというのです。まさに「脳腸相関」の悪循環なのかもしれません。
これらの、結果を証明するように過敏性腸症候群の患者の場合には、ストレスホルモンとも言われているコルチゾールを制御する反応が健常者よりも高いというのです。
このコルチゾールの分泌を、もう少し説明していきますと、私たちはストレスという負荷がかかってきますと、脳内でCRH(Corticotropin-Releasing Hormone)が作られ、その作用によって副腎で副腎皮質ホルモンの一つであるコルチゾールが放出されるということなのです。
動物実験などでは、CRHを注射すると大腸の動きが活発になり下痢を起こすことがすでに分かっています。
また、過敏性腸症候群の発症については先天的な遺伝性についての考察もありますが、必ずしもそうでもないということも言われています。
そのきっかけとなるのが感染性の急性腸炎で、カンピロバクター、赤痢菌、サルモネラ菌は、「IBS三兄弟」と呼ばれるほど、過敏性腸症候群のきっかけになり易い病原菌と言われています。
つまり、この悪循環の主たる原因のひとつが「脳」からの場合は、「ストレス」であり、「腸」からの場合は、細菌性の腸感染症ということになることがわかってきたのです。
特に、これらの腸炎感染者のうちのIBSへの移行の割合が、腸炎にならない人の7倍であるという結果も出ているようなので、過敏性腸症候群の心配な方は、まず、腸感染症の予防をすることが大切なのかもしれません。
昨今、増え続けている過敏性腸症候群の予防方法があるのだとしたら、ストレス耐性をしっかりしていくとともに、腸内感染を防ぐためにも腸内フローラの状態を常に良い状態に保つことで予防になるのかもしれませんね。
Posted by toyohiko at 14:40│Comments(0)
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