2017年10月14日
「良い菌を増やし、悪い菌を減らす」の意味

「良い菌を増やし、悪い菌を減らす」というフレーズは乳酸菌やビフィズス菌の入った、飲料や食品に記載されている表示として目にしたことのある方も多いかと思います。
一方で、「お腹の健康のために良い菌を積極的に摂りましょう・・・」という、話も多くの場面で目にする方も多いと思います。
この最初の「良い菌」とあとから出てくる「良い菌」は、同じ菌なのでしょうか?
ちょっとわかりにくいのかもしれませんが、この二つの良い菌は、実は違う種類の「菌」を指していることがほとんどなのです。
乳酸菌やビフィズス菌には、更に細かい分類として非常に多くの菌がいることをご存じの方も多いかと思います。この単位を「菌株」と言いますが、そのために、多くのメディアに出てくる場合、その食品に使用している菌の種類を「〇〇・・・株」という呼び方をして、他の食品に使用されている菌との差別化を図っているのです。
その理由としては、近年の研究で乳酸菌やビフィズス菌は大きなくくりでその菌の特性を表現することが不可能であることがわってきたからです。具体的に云いますと、乳酸菌の中にも、人間の身体にとって「善玉菌として良い働きをする菌」もあれば、「悪玉菌として悪影響を及ぼす菌」もあるということです。
人間の消化管には、腸内フローラと呼ばれる様々な菌の集団が出来上がります。これは、出産直後の無菌の状態から、2~3歳位で出来上がって来ると言われています。この時期の腸内フローラの構成に従って、自分の身体にとって「敵」と「味方」を仕分けることによって、身体の中の60~70%と言われる腸管免疫のシステムを作り上げていくのです。
つまり、この時点での菌の構成が「学校のクラス分け」のように決まっしまうということなのです。この「クラス分け」は、良い菌と悪い菌の多さや全体の種類の多さも含めて人それぞれ全く違うことが分かっています。
一般的には、「クラスにいる菌の種類が多い方が良く、善玉菌と呼ばれる人間の身体にとって良い働きをする菌の割合が多い方が良い・・・」と考えられています。
ここでの、ポイントはこのクラス分けは一度してしまったら、「一生クラス替えがない・・・」ということです。
先ほどの、最初に示した「良い菌」は、生まれてきて最初に決まった時のクラス分けの時にいる「優等生」みたいなものと考えると良いかもしれません。
実際の、学校のクラスがそうであるように、クラスの雰囲気や生徒各個人の影響力は様々なので、学級の様子は常に変化します。例えば、まじめな生徒がクラスをリードし、クラスの雰囲気が良くなることもあれば、いたずら好きな、生徒と一緒に盛り上げって派目を外したりすることもあると思います。
これらの場合、多くの生徒は、そのクラスの雰囲気に合わせて同調するということもあると思いますが、人間の腸内での腸内フローラの変化はそのような状態だと思うと理解しやすいのかもしれません。
一方、あとから出てくる「良い菌を摂る・・・」という方の「良い菌」は、中学校や高校の教科担任の様なものだと思っていただくと良いのかもしれません。
つまり、担任の先生ではないので、クラスにずっと居続けることはできません。「このクラスの人ではありません」という判断を腸管の免疫システムが行うので、良い先生でも、そうでない先生でも「クラスの一員ではない」という理由で、「外に出ていってください」と指令を出すのです。
当然、良い先生であれば、クラスの優等生を中心に良いクラスの雰囲気に変えることが出来ますが、先生がいなくて自習しているときには、「それぞれが好き勝手・・・になってしまう。」という事態が起こりやすいということになります。
つまり、良い状態にするには、「良い先生に居続けてもらう・・・」事が有効な方法になるということは、多くの人が理解していただけると思います。
当然、その「良い菌」が生きていれば、殺菌した状態以上の働きをすることが出来ますし、増殖して摂取した「良い菌」自身の数を増やすことも可能です。
そして、数が多くなればクラス内での少人数での個別指導が効果を発揮するのと同じように「良い腸内フローラを保ちやすい・・・」ということになるのです。
このクラスの雰囲気は、「クラス分け」をしなくても、多くの場合は先生の指導で何とかなるようなのですが、あまりひどいような場合は、「便移植療法」という「クラス替え」の技術も最近では考えられているようです。
Posted by toyohiko at 14:05│Comments(0)
│身体のしくみ