2018年04月06日
脂肪は悪者なのか・・・それとも・・・

脂肪と言えば、健康というイメージの中で「肥満」や「メタボ」などのネガティブなイメージとして捉えられる筆頭株の一つなのですが、最近は、そのメカニズムが分かって来るにつれて様々な役割がある事が知られるようになってきました。
「肥満」という状態は、単に体内のカロリー収支が合わないために脂肪細胞として蓄積されているだけ・・・というのが、従来の考え方の主流を占めていました。
そんな中、この事は、ニューヨーク大学医学研究科のMartin J.Blaser教授のように、「肥満という状況を炎症反応で考えることが重要・・・」という考え方を示す研究者が出てきたり、単純にエネルギー収支余剰分のタンクというわけではなさそう・・・というのが近年の研究で明らかになりつつあることのようです。
大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学の前田法一准教授によりますと、「脂肪細胞は、様々なホルモンを産生する最大の内分泌臓器であることが明らかになった・・・」としてます。そのホルモンは、抗動脈硬化や抗糖尿病作用、抗炎症、抗線維化作用など様々な働きをしているというのです。
その中でも、注目されているのがアディポネクチンという脂肪細胞ホルモンです。
ヒトのアディポネクチンは、1996年に世界で初めて発見され、その後、血中濃度を測定するシステムが開発され様々な事が分かるようになってきたのです。
先ほども云いましたように、このアディポネクチンというホルモンは、老化に伴う慢性臓器障害に対しての防御作用があることが分かっています。
その一方で、肥満になり、内臓脂肪が蓄積することによって血中のアディポネクチン濃度が低くなり、低アディポネクチン血症という糖尿病や高血圧症、脂質異常症のリスクが高まると言われています。
また、マウスなどによる実験では人為的に心筋梗塞の状態にすると血中のアディポネクチンが3分の2位まで低下し、1週間くらいでもとの数値にもどるという結果も出ていますので、このホルモンと循環器をはじめとする多くの器官との関連が解明される事は、今後大きな期待がかかるところです。
また、通常の生活の中でアディポネクチンの濃度との関係性も少しずつ分かってきており、大豆たんぱくは血中濃度を約1割上昇させるとか、その一方で、喫煙によって血中濃度が下がるという報告もあり、今後、意識していくことが重要なホルモンの一つになりそうです。
今のところ言えそうなのは、「脂肪は多くても少なくても良くない・・・」というくらいしか分からないというの現状のようですが、ただの「エネルギー収支余剰分のタンク」なのではなく、身体にとって非常に重要な役割をしているということだけは云えそうです。
Posted by toyohiko at 12:33│Comments(0)
│身体のしくみ